■笑顔の大切さを教えてくれる切ない物語「妖怪けらけら女の巻」
最後は、「妖怪けらけら女の巻」を振り返る。主人公は、日ごろから怪異に魅入られがちなまことだ。
ある日、テストで15点を取って自分をダメ人間だと思い込んでしまったまことは、帰り道でケラケラと笑う和装の巨大な女性と出会う。女性は、福笑いのように顔を変えてまことを笑わせると消えてしまった。
翌日、女性が妖怪・けらけら女だと判明。何でもけらけら女は、笑いと笑顔で人々を魅了し美人と言われた人の念が妖怪化したもので、出会う人を楽しませてくれるのだとか。以来まことは落ち込むたびにけらけら女に会いに行き、笑顔を貰うことで、どんどん調子が良くなっていった。
しかしその一方で、まことらが後日彼女に会いにいくと、そこには衰弱したけらけら女の姿があった。実は彼女の正体は取り壊し中の屋敷に置かれた古鏡。そして、その古鏡の持ち主は、町一番の笑顔美人だったという。
彼女は笑顔の美しさを買われて将軍の世話役として城に上がり、その念が鏡にこもることでけらけら女は生まれた。けらけら女はずっと人に笑うことの大切さを教えていたのである。まことが感謝を伝えると、けらけら女は「ケラケラ…これからもいつも笑顔を忘れずに」と言い消滅していった。
この物語は、笑顔でいればきっといいことがあるという大切なことを教えてくれる、泣き笑いの表情が悲しいエピソード。『ぬ~べ~』は怖い妖怪が多いが、けらけら女とはぜひ会ってみたいものだ。
『ぬ~べ~』はトラウマレベルに怖い妖怪や霊魂が登場するエピソードが多かったが、今回紹介したエピソードのように良い妖怪たちも登場していた。多種多様な怪異が描かれるからこそ、多くの読者から愛されていたのだろう。