『ONE PIECE』懸賞金制度に「隠された闇」… ロロノア・ゾロ以降、なぜ「海賊狩り」は増えないのか?の画像
DVD「ワンピース THE MOVIE デッドエンドの冒険」(東映ビデオ) (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション 「2003 ワンピース」製作委員会

 海洋冒険ロマン漫画『ONE PIECE(ワンピース)』といえば、“ひとつなぎの大秘宝”を追い求める海賊がしのぎを削る「大海賊時代」を舞台に描かれている。

 主人公ルフィをはじめとする、数多の名だたる海賊たちが登場する中で、「海賊狩り」の存在をどれだけの読者が覚えているだろうか?

 ルフィの仲間であるゾロが“海賊狩り”と呼ばれているが、現在のゾロにとっては単なる異名に過ぎず、賞金首を狩って生計を立てているわけではない。

 圧倒的に数が多い海賊に対して、海賊狩りを営む者は一向に増えていないのだ。そこで今回は、作中に海賊狩りが増えない理由を、懸賞金制度と絡めて考察していこう。

■現時点で判明している海賊狩りはごく少数?

 まず、明確に「海賊狩り」「賞金稼ぎ」として登場した人物を挙げていくと、現在も異名としてその名を轟かせているロロノア・ゾロ、そしてかつてゾロとともにバウンティハントをしていた2人組のヨサクとジョニーが代表格だ。

 他には、かつて海軍本部にて少尉の地位に就き、ウソップの父親ヤソップとの決闘に敗北後ローグタウンで名うての賞金稼ぎとなったダディ・マスターソン、ドレスローザ編のコロシアムにて登場したジャン・アンゴ、アブドーラとジェットのコンビなどが挙げられる。

 これだけ長く続く物語において、明確に賞金稼ぎと明言されている人物はこの程度で、本当に数えるほどしか登場していないことが分かる。

 新章に入るたびに新たな海賊はわんさか登場するものの、それを狙う海賊狩りや賞金稼ぎの新キャラはほとんど登場しない。もし出てきたとしても「珍しいな」程度のインパクトしかなさそうなのが現実なのである……。

■賞金首を倒せるほどの実力者なら海賊or海軍になる?

 なぜこれほどまでに海賊狩りが増えないのかを考えた際、実力者であれば自ら海賊になったほうが手っ取り早く金を稼げるから、という理由が挙げられる。

 作中における懸賞金制度というのは、その人物の危険度を表している。つまり、懸賞金の額が高ければ高いほど、政府や民間人にとって危険な存在だ。思想、所属する組織、経歴など、さまざまな要素が絡んで金額が決められるようだ。

 一応、第91巻のSBSにて、巨大な組織の部下というだけで懸賞金が上がる仕組みであることが明かされ、作者の尾田栄一郎氏も「個人につけられた金額で強さを計るのは実はムズかしいです」とコメントしていた。

 とはいえ、バギーのような例外を除けば、やはり高額な賞金首ほど高い戦闘能力を持ち、政府がおいそれと手を出せない規模の組織に属していることが多いように思える。

 もし、そんな賞金首を打ち倒せるだけの実力があるなら、その能力を使って海賊として無法行為を働いたほうが面倒は少ないし、はるかに簡単に大金を稼げるのは容易に想像がつくだろう。

 それに積極的に海賊行為をしなくても、ドフラミンゴやクロコダイルのように国のトップや裏社会と闇取引を行い、蓄財することだって考えられる。

 また、場合によっては海賊のような反社会的な存在ではなく、海軍やサイファーポールといった世界政府側に実力を認められて雇用されるケースもありうるだろう。

 いずれにしても、そこまで実力のない海賊狩り・賞金稼ぎでは、そこそこのレベルの海賊しか相手にできず、一攫千金を狙って大物海賊を狙うとなると大きなリスクを背負うことになる。

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