■木村拓哉さんとW主演のミステリー『眠れる森』

 1998年に放送された『眠れる森』は、中山さんの代表作の一つだ。当時、アイドルとして絶大な人気を誇っていた元SMAPの“キムタク”こと木村拓哉さんとのW主演とあって、大きく注目されたドラマだ。

 当時は美しいヒロイン&木村さんであれば高視聴率が取れるといった風潮があったが、本作は単なる“ラブストーリーもの”ではなく、緻密なミステリー要素を織り込んだ本格ミステリーロマンスとして展開された。

 物語は婚約者との結婚を目前に控えている主人公・大庭実那子(中山さん)が、ある日偶然、差出人不明の古い手紙を見つけるところから始まる。その手紙には「15年目の今日、眠れる森であいましょう」と書かれていた。その後、実那子は手紙の送り主に会うため、思い出の森を訪れる。そこで待っていたのが、実那子の過去を知る謎の男・伊藤直季(木村さん)であった。

 実那子は幼いころ、家族全員を交通事故で失った過去を持っていた。事故のショックで幼少期の記憶が曖昧だった実那子だが、物語の鍵を握るのは15年前に起きた市議会議員一家殺人事件であり、実那子の失われた記憶が事件と深くかかわっていることが明らかとなる。

 そしてフラッシュバックにより彼女が記憶を取り戻すたびに新たな真実が浮かび上がり、物語は緊張感を増していくのだ。

 中山さんは過去を追い求めながらも苦悩する女性を繊細に演じ、まるで童話の『眠れる森の美女』のプリンセスのような美しさ、そして儚さと強さを感じさせた。

 本作では実那子の婚約者やその失踪した母親、直季の友達や恋人など多くの登場人物が登場する。しかし彼らの多くが二面性を持っており、誰が味方で誰が敵か分からない展開が視聴者を引き込んだ。ミステリアスな木村さんの演技も相まって、二人の微妙な関係性からも目が離せなかった。

 従来のフジテレビドラマとは異なるミステリー要素を前面に押し出した本作は、視聴者から高い評価を受け、最終回は30%を超える視聴率を記録した。

 

 今回紹介した作品に共通するのは、苦悩しながらも前向きに進んでいく女性の姿だ。それを中山さんはただ美しく見せるだけでなく、内面的な深みを持たせた演技で魅了した。この姿に多くの視聴者は共感し、憧れを抱いたことだろう。

 90年代、数々のドラマで活躍した中山美穂さん。当時、学生だった筆者は、中山さんの比類なき美しさに魅了され、彼女の澄み渡る歌声に聴き惚れた1人だ。それがもう二度と見られないことは、本当に残念でならない。

 中山さんの数々の功績は、今後のテレビドラマや映画文化にも大きな影響を与えていくことだろう。

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