『For You』に『おいしい関係』、『眠れる森』も…90年代フジテレビ名作ドラマ「ヒロイン・中山美穂」が最高に輝いた瞬間の画像
中山美穂 (C)ふたまん+

 女優として数々の名作に出演し、歌手としても多くの人々に愛された中山美穂さんが12月6日に亡くなった。その突然の訃報に、多くの人々が悲しみの声をあげている。

 中山さんはアイドル歌手として鮮烈なデビューを果たすと同時に、女優としてもその才能を発揮してきた。90年代はフジテレビの人気ドラマに数多く出演し、圧倒的な演技力と華やかな存在感で視聴者を魅了した。出演作は次々に高視聴率を記録、彼女の演じた役柄やその演技は、多くの人々の記憶に深く刻まれている。

 ここでは、女優・中山美穂さんが輝きを放った90年代フジテレビドラマの名作を振り返り、彼女が残した足跡を振り返ってみたい。

■ 久しぶりの恋にときめくシングルマザーを見事に演じた『For You』

 『For You』は、当時24歳の中山さんが未婚の母親役に挑んだ1995年放送の月9ドラマだ。本作で中山さんは、若く美しいシングルマザーを演じ、従来の“可愛いアイドル”というイメージに加え、成熟した演技力を見せていた。

 あらすじはこうだ。中山さん演じる主人公・吉倉弥生は旅行先で出会った男性と恋に落ちるが、彼は飛行機事故で命を落としてしまう。その時すでに妊娠していた弥生は、シングルマザーとして息子を育てながら懸命に生きる日々を送っていた。

 しかし6年後、三矢徹(高橋克典さん)と出会ったことで、久しぶりに心がときめく。だが、シングルマザーであることを周囲に隠していたため、徹にも息子の存在を伝えることができない。そのまま二人の距離は徐々に縮まっていく……というストーリーだ。

 中山さんは弥生の苦悩や母としての強さ、そして久しぶりに恋愛感情を抱く戸惑いを繊細に表現していた。息子役を演じた明石亮太朗さんとの息の合ったやり取りも印象的だ。本作を見ていた筆者は当時「こんな美しいママは世間にはいないよな〜」と思いながらも、ドラマを熱心に見た記憶がある。

 本作は、シングルマザーが恋愛に踏み出す難しさや社会的な偏見を丁寧に描いているのも良かった。未婚の母の視点から、再び恋心を取り戻すまでの心の葛藤と成長を描いたストーリーは多くの共感を呼んだ。

■スープを味わう中山さんの所作も美しかった『おいしい関係』

 『おいしい関係』は、槇村さとるさんの人気漫画を原作とした1996年放送のドラマである。

 本作で中山さんは、社長令嬢から見習いシェフへと転身する主人公の百恵を演じた。物語は、父を亡くした百恵が唐沢寿明さん演じる天才シェフ・織田圭二と出会い、彼のレストランで働き始めるところから展開していく。織田は気難しく孤独な性格で、百恵とはたびたび衝突するが、料理を通じてだんだんと心を通わせていくストーリーだ。

 中山さんの凛とした美しさは、社長令嬢から一歩踏み出した女性像を際立たせていたように思う。その一方でパチンコで気分転換をする姿や、自分に正直に生きる等身大のキャラクターとしての魅力も存分に発揮されていた。また、織田とのテンポの良い掛け合いや、時折コメディタッチになるシーンがちょくちょく挟まれていたため、軽快さが感じられるのも良かった。

 そして、中山さんの魅力がもっとも引き立っていたのが、料理を味わうシーンだろう。横顔の美しさや丁寧な所作は、ただ食事をしているだけでも華やかな雰囲気を醸しだし、視聴者を魅了した。

 本作は配役も豪華だった。フードプロデューサー役に飯島直子さん、織田を慕う弟子のシェフ役には草彅剛さんがキャスティングされている。また、次々に登場する一癖ある客たちも物語を盛り上げた。

 百恵がそのような曲者の客にどのように向き合い織田と協力して解決に導くか、そんなドラマティックな展開も見どころの一つであった。

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