■旅の重要アイテムはここで獲得した土星の衛星「タイタン」16日

 『銀河鉄道999』のストーリーでもっとも長い停車時間である駅は、コミックス1巻の「タイタンの眠れる戦士」に登場する土星の衛星“タイタン”である。ここの1日は地球時間の16日間に相当するため、停車時間も16日間であった。

 この星は地球よりも緑豊かな惑星であるが土星からの光が強く、帽子などを被っていないと土星射病になるリスクがある。また個人の自由をさまたげると罪になる「楽国法」という法律があり、殺人や強盗が横行していた。

 案の定この星に到着した途端メーテルは連れ去られてしまい、鉄郎は一人の女性に助けられる。メーテルを救出しに向かう鉄郎に対し、彼女は息子の形見である“戦士の銃”と帽子を譲り、それを身につけた鉄郎はメーテルの救出に向かうのであった。

 鉄郎はその後、ここでもらった帽子をかぶる姿がトレードマークになり、戦士の銃によって何度も命を救われている。タイタンでの経験は、鉄郎のその後の旅に大きな影響を与えるものとなった。

 ただし上記のエピソードはたった1日での出来事である。残り15日間、“列車の中で本でも読んで過ごす”と鉄郎は言っており、その理由を“めちゃくちゃな法律で好き放題にやっているこの楽園で遊びほうけて、この星の人間のようになりたくない”と、述べている。

 タイタンという無法地帯での冒険は、鉄郎にとって重要な教訓と装備を与えるものとなった。

■【番外編】2日間で300年の年月が流れる「重力の底の墓場」

 最後は番外編として、とんでもなく時の流れが速い場所に遭遇したケースを紹介したい。

 コミックス3巻「重力の底の墓場」にて、“死の海域サルガッソーのようなところ”と呼ばれる重力の底に脱線して落ちてしまった999号。

 そこには2日前に脱線し遭難した機関車があり、内部に入ってみると乗客全員が白骨化していた。この列車のなかはものすごい速さで時間が流れており、たった2日間で約300年もの時間が経過していたのだ。

 その後、時間を操る謎の女性・リューズが登場し、鉄郎は彼女の家に無理やり連れていかれる。機械の体をあげるからここで一生一緒に暮らそうと言われるものの、鉄郎は「ぼくの未来や運命は 自分で決めたい!!」「そのために死んでも後悔はしないぞ!!」と、リューズの提案を突っぱねるのであった。

 鉄郎の漢気が分かるエピソードだが、やはり恐ろしいのはこの回での時間経過だ。脱線した列車内はものすごいスピードで時間が流れており、2、3分ほどそこに居ただけで実は34時間もの時間が経過しているとメーテルは解説している。

 かつてアインシュタインは相対性理論で、移動速度が遅かったり重力が弱かったりすると時間は速く進むと提唱した。この回は、それを証明するかのように時間の概念が大きく覆されたエピソードであった。

 

 停車時間の長い星で、さまざまな経験をした鉄郎。人の人情に触れ幸せな期間を送ったこともあれば、拉致されて記憶が消されそうになるなど、危険な目にも遭っている。

 2週間以上の停車時間はとても長いうえ、停車する駅が経験したことのない宇宙の星ということを踏まえれば、その体験時間はさらに長く感じたことだろう。

 鉄郎たちが経験した長期滞在は大変なものが多かったが、たまには2週間程度の休暇を取って旅行に出たくなるエピソードの数々でもあった。

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