■遊んでみると“らしさ”が感じられた『源平討魔伝』

『源平討魔伝』(ナムコ)といえば、ダークな雰囲気の美麗グラフィックで描かれた巨大キャラが動き回り、特徴的なボイスでもファンを沸かせたアーケードゲームです。その重厚な和風プログレサウンドは、ナムコファンだけでなく、多くのゲームファンの度肝を抜きました。

 そんなアーケードを代表する傑作アクションが、ファミコンに移植されることに驚いたファンも多いはず。しかも、まさかの「ボードゲーム+RPG」に変貌を遂げ、二重の意味で衝撃を受けました。

 九州から鎌倉まで日本を縦断し、源頼朝を倒すという目的こそ同じものの、「サイドビューモード」「ビッグモード」「平面モード」という3タイプのアクションが楽しめたアーケード版とは、完全に別物に。ファミコン版は、シンボルエンカウント方式のRPGに生まれ変わったのです。

 当初は「さすがにこれは……」と想定外の移植内容にがっかりしたものですが、遊んでいるうちにおもしろいRPGだと気づきます。ちなみにファミコン版にはボードゲーム用の地図やメタルフィギュアなどが同梱され、入手した三種の神器のカードを手元に置けば状況がすぐに分かるという優れものでした。

 もちろん付属品がなくてもきちんと遊べるので、当時ファミコンの移植版を敬遠してしまった人も、あらためてプレイしてみてはいかがでしょうか。

■首切り投げがしたかった……! よりドラマチックな演出が目を引く『忍者龍剣伝』

 テクモが1988年にリリースしたアーケードゲーム『忍者龍剣伝』。横スクロールのベルトスクロールアクションで、攻撃とジャンプ、そしてレバーの上部についた“握るボタン”という3ボタンを駆使して戦う、変わったゲームでした。

 なにより特徴的だったのは「フジヤマ」「ゲイシャ」「スシ」「サムライ」的な、西洋人が勘違いしたような日本という独特の世界観。ステージ間には、寿司店で腕組みする忍者や、カジノで豪遊する忍者といった、思わずクスッとさせられるシーンが描かれています。

 そんな『忍者龍剣伝』のファミコン版は、アーケード版のリリースからわずか2か月後に発売されます。こちらは同じ忍者が主人公でありながら、章の間にシリアスでドラマチックなストーリーが展開される横スクロールアクションでした。

 発売タイミングを考えると、移植作というより同名の別タイトルだったのかもしれません。しかし、ファミコン版『忍者龍剣伝』はかなり難易度が高めながら、三角飛びなどの忍者らしいスタイリッシュなアクションを駆使して戦う、完成度の高い作品に仕上がっていました。

 筆者も当時、難しいファミコン版を四苦八苦しながら楽しみましたが、アーケード版のように空中で投げる「首切り投げ」があればなぁ……と思ったものです。

 

 ハードの性能的に、アーケードゲームを忠実にファミコンに移植するのは不可能なことです。だからこそ、どこを活かすのか、どのようにアレンジするのかは、クリエイターの腕の見せどころだったのでしょう。

 今回紹介した素晴らしい移植ソフトは、「Nintendo Switch Online」で遊べたり、比較的中古品が入手しやすかったりするものばかりなので、当時食わず嫌いをしていた人も一度プレイしてみることをおすすめします。

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