■藤真の存在は大きかった! 大幅な戦力ダウンが予想される翔陽

 残念ながら、神奈川の主要高校でもっとも戦力ダウンが予想されるのが翔陽高校だ。

 藤真健司と途中交代するGの二年生・伊藤卓を除いて、花形透、長谷川一志、永野満、高野昭一の出場した全員が三年生だった。ほかに試合に出られるような有望な二年生・一年生がいなかったのか、それとも三年生が優秀すぎたのか。いずれにせよ来年、大幅な戦力ダウンは避けられないだろう。

 また、翔陽はキャプテンの藤真が監督代理を務めていたように、しっかりとした指導者がいないことも非常に不利な材料だ。しかも、その頼みの綱であった藤真も来年はいない。これは現戦力の底上げの面でも、有能な指導者がいる他チームに確実に劣るだろうし、有能な中学生プレイヤーが進学先として本校を選ぶ動機としてみても圧倒的に不利に働く。

 主力メンバーを三年生のみにしてきたこと、そして、指導者の不在。このことから来年の翔陽は相当厳しいと言わざるを得ない。

■その他の神奈川勢は?

 そのほかの神奈川勢はどうだろうか?

 まずは、神奈川県大会決勝リーグの4チームに残った武里高校だが、ここは正直評価しにくい。神奈川ベスト4に入るくらいなので決して弱くはないはずだ。しかし、決勝リーグで対戦した海南、陵南、そして湘北には手も足も出なかった印象だった。さらに、来年に何か望みをつなぐような要素も描かれていなかった。

 続いて、県予選一回戦で湘北が対戦した三浦台高校。桜木とバチバチにやりあっていたキャプテンでSF・村雨健吾は引退している。しかし三浦台には(アニオリだが)二年生・内藤鉄也というちょっと面白い選手が来年もいる。

 内藤は、196センチ155キロという恵まれた体格(名朋工業・森重寛が、199センチ100キロとされているのでそれと比べてもその巨漢ぶりが分かる)で、さらには100メートル11秒フラットという驚異のフィジカルを持ち、試合でも赤木や桜木を吹き飛ばしていた。内藤はラグビー部から引き抜かれた桜木以上のバスケ素人だったが、彼が本気でバスケの練習をすれば一年後にはかなりの難敵となりそうだ。

 最後に、湘北が神奈川県大会予選トーナメント4回戦で当たった津久武高校も押さえておこう。アニメにて津久武は前年ベスト8の古豪とされていたが、原作の漫画では数コマしか描かれなかった。しかしアニメ版の映画『SLAM DUNK 全国制覇だ!桜木花道』では、その試合内容が補完されている。

 津久武は、安西監督が“白髪鬼”と恐れられていた大学バスケ監督時代の教え子でもある川崎一美監督が指揮している。川崎監督は部員と一緒に外ランをこなし、ロッカールームでは冗談を言い合うなど、高校生である選手たちと良好な関係を築く若手イケメン監督だ。

 また、バスケを諦めかけていたキャプテンの伍代友和に3Pという新たな道を示すなど、指導者としてもかなり優秀な人物だった。さらにその川崎監督がもっとも期待を寄せていた荒削りでヤンチャなC・“メッシュ猿”こと南郷洸一郎も、一年生のため残っている。南郷をはじめ、川崎監督のもと津久武は来年はさらにいいチームになっていそうだ。

 

 今回は『SLAM DUNK』三年生引退後の神奈川勢力図を考察してきた。

 地力に勝る王者「海南」、桜木のケガはあれどスタメン3人が残った「湘北」、その湘北以上に戦力を維持し仙道三年生の集大成として挑む「陵南」。来年の神奈川は間違いなくこの三強となるだろう。

 そこに割って入るチームはあるのだろうか。その行く末を、我々は現段階で知ることはできないが、想像を膨らませて楽しむことは十分できる。

 連載終了からおよそ30年、今でもそのような楽しみができることも『SLAM DUNK』という作品の魅力があってこそだろう。

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