
2024年11月14日、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』がリリースされ、ファミ通.comの報じたところによると初週売上だけで82万本を超える大ヒットを記録している。このニュースは『ドラゴンクエスト』というシリーズの底知れない人気と影響力を改めて感じさせるものだった。2025年には『ドラゴンクエストI・II』のリメイク版の発売も控えており、シリーズ誕生から38年以上経った今でも、ドラクエの人気は衰えるどころか進化し続けている。
そんな国民的RPGである『ドラクエ』シリーズだが、長年のファンでも知らないような豆知識が数多くある。本記事では、そんな『ドラクエ』の「案外知られていない豆知識」を掘り下げていきたい。
■すれちがい通信も画期的だった『9』
『ドラゴンクエスト』といえば、毎作ごとに記録的な売り上げを叩き出す「モンスター級タイトル」として知られている。その中でも、シリーズで最も売れたタイトルが2009年に発売されたニンテンドーDS向け用ソフト『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』。国内で累計400万本以上を売り上げた(エンターブレイン調べ)。
当時、画期的だったのが「すれちがい通信」の導入だ。プレイヤー同士が街中ですれ違うだけで宝の地図を交換できるという斬新なシステムは、多くのユーザーを引きつけた。この「すれちがい通信」は一種の社会現象を巻き起こし、駅や公園に集まり通信を楽しむ光景が全国で見られた。ゲームが単なる一人遊びから、交流の手段として進化を遂げる、時代の転換点の一本と言えるだろう。
また、スーパーファミコンやプレイステーションといったハードではソフトは各家庭1本になりがちだが、子ども1人につき1台を持つことも多かったDS。その台数分だけ『ドラクエ9』を購入していたという家庭も多かったのかもしれない。
一方、リメイク版も含めたシリーズ全体で最も売れたタイトルは『ドラクエ3』。1988年のファミコン版発売の際は、町中に『ドラクエ3』を求める行列ができた、国内だけで380万本を売り上げた「伝説」のタイトル。さらにスクウェア・エニックスの発表によると、1996年のスーファミ版では140万本、ゲームボーイカラー版では75万本の出荷本数を記録。2024年のHD-2D版は発売から間もないにもかかわらず82万本以上を記録している。
これらを合わせると、さらなる売上になるだろう。
■容量ギリギリの第1作に使用されていた「漢字」
ファミコン時代のゲーム開発において、限られた容量との戦いは避けて通れないものだった。初代『ドラクエ』はその最たる例で、あらゆる工夫が施されており、たとえば、文字の容量削減がその一例。
漫画『ドラゴンクエストへの道』 (監修:石ノ森章太郎氏、作画:滝沢ひろゆき氏)に描かれたエピソードによると、『ポートピア連続殺人事件』で堀井雄二氏が「よく使う20文字のカタカナ」を考案。これが『ドラクエ』でも応用された。
たとえば「ダークドラゴン」というモンスター名が、「ク」が20文字に含まれなかったため「ダースドラゴン」と変更された。同様に、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』の「アリーナ」の名前が「ア“り”ーナ」とひらがな表記になったことも、この制約によるものだ。
さらに興味深いのは、初代『ドラクエ』で使用されている「力(ちから)」に関する表記だ。「こうげき力」や「しゅび力」といった表現に使用されている「力」の字は、実は漢字ではなくカタカナの「カ」が採用されており、言われてみるまで「こうげきカ」「しゅびカ」と描かれているとはなかなか気づかない。
このように、細部にまで工夫を凝らした設計が、ファミコン時代のドラクエを支えていた。