■「それ」から逃げたい、逃げられない。『バイオハザード』
主人公になりきるRPGとはまた違った形で深い没入感を味わわせてくれるジャンルといえば、やはりホラーゲームだろう。
人間の恐怖という感情に直接訴えかけるホラーゲームは、『かまいたちの夜』のようなサウンドノベルや、『クロックタワー』のような横スクロール型のアクションアドベンチャーなど、より細かなジャンルに区分される。
そんななか、新たにサバイバルホラーというジャンルを確立した3Dゲームには「誰も、それからは逃れることはできない。」というキャッチフレーズが掲げられた。1996年に発売したそのゲームこそ、今もなお世界中で愛される『バイオハザード』である。
初代『バイオ』の恐怖感を引き立てていたのは、ほかでもないそのカメラワークにあるのではないだろうか。現代の『バイオ』シリーズでも多く見られる三人称視点(TPS)ではなく、複数の固定カメラを切り替えるような独自の視点は方向感覚や距離感が掴みにくく、もたついてしまう人も多かったことだろう。
プレイしはじめたばかりのころは、カメラが切り替わった先で突如現れるゾンビに絶叫し、逃げようとするも操作がおぼつかず噛まれてしまうという、まさに「逃れることはできない」恐怖感を味わわせてくれた。
のちにニンテンドー ゲームキューブにてリメイクされた際のキャッチフレーズは、「そこを歩く、という恐怖。」。恐怖に慄き、スティックを細かく倒しながらちょこちょこ進む我々プレイヤーの心情を的確に捉えたような、秀逸なキャッチフレーズである。
■思い出を何度でもリトライできるゲーム『ぼくのなつやすみ』
『バイオ』の独特な視点は多くのプレイヤーに恐怖を与えたが、同じシステムを踏襲しながらもホラーとは正反対であるほのぼのとしたジャンルのゲームもPSにて発売されている。
当時のゲーム業界の最先端を走っていたPSにて、「なくしたもの思い出しゲーム」のキャッチフレーズを掲げて発売されたのが『ぼくのなつやすみ』だ。
小学生の主人公「ボク」となって、ゲーム内の夏休みをとにかく楽しむだけのシンプルなゲームである本作。当時小学生だった筆者は、夏休みを『ぼくなつ』の舞台のような山村で過ごすこともなかったし、昆虫採集や魚釣りなどにも興味を示す子どもではなかったため、過去への思いを馳せるというよりは「憧れ」で本作に触れていたことが思い出される。
とはいえ『ぼくなつ』はそうした特別な体験だけでなく、小学生当時に友人と交わした何気ない会話や、理由もなく家の周りを探検していたことなど、子どもの頃の無垢な感情を思い出させてくれるのだ。
シリーズとしての新作は2010年以降発売されていないものの、「なくしたもの思い出しゲーム」というプレイヤーに寄り添ったその温かなキャッチフレーズは、今も心に残り続けている。
ゲームをプレイする前にはワクワクを、プレイしたあとには思い出の一つとなる印象的なキャッチフレーズたち。
発売を心待ちにしているゲームや、昔プレイしていた懐かしのゲームにはどんなキャッチフレーズがついているか、調べてみるとより一層そのゲームへの思い入れが増すかもしれない。