■名家のお嬢様として存在感を見せた波瑠
Season11の第11話「アリス」では、いまでは主演女優として活躍している波瑠さんがメインキャラクターとして登場している。波瑠さんといえばNHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』で国民的な人気を獲得し、その後もさまざまな作品で主演を務めている。
そんな彼女はまだ20代前半の頃『相棒』シリーズに登場し、瑞々しい演技を見せている。波瑠さんが演じたのは、過去の少女失踪事件の謎を特命係と追うことになる旧家の令嬢・二百郷茜だ。波瑠さんはこの時はモデルとして活動しており、女優としてはあまり広く知られた存在ではなかった。そんな彼女が元日スペシャルで、超重要キャラに抜擢されて存在感を見せつけたのだ。
「アリス」のストーリーは、二百郷朋子という女性が75歳で亡くなったことから始まる。彼女は1955年に起きた友人の失踪事件を死ぬ直前まで気にしていた。そして、知り合いである右京に「ヒナギクじゃなかった。茜が危ない。あの子を助けて」というメッセージを託していたと判明する。その後特命係が茜に会うと、彼女の周りで奇妙な事件が起き始める。
茜は清楚で品のいい女性だが、大叔母がずっと気にしていた少女失踪事件を懸命に解き明かそうとする芯の強さも魅力だった。「杉下さん、秘密の隠し場所を見つけてください」と二百郷家の過去と向き合う覚悟を見せ、茜にとってもつらすぎる真相が分かった後には「時間の止まったお茶会はおしまいです」と晴れやかな表情を見せ、前を向いて生きていこうとする意志をしめした。そんな彼女の存在感と演技力によって、ノスタルジックな雰囲気が漂うエピソードである「アリス」はより印象的なものになったといえるだろう。
■失踪事件のミステリアスな被害者・瑠璃子を演じた広瀬アリス
波瑠さんと同じく「アリス」には、いまでは主演級の女優がもう一人出演している。それは本作のキーパーソンとなる失踪事件の被害者・瑠璃子を演じた広瀬アリスさんだ。
広瀬さん演じる瑠璃子は元子爵の令嬢であり、茜と並び、「アリス」のもう一人のヒロインともいえる存在である。彼女は戦後という不安定な時代、元子爵令嬢という立場の人がどういった状況に陥っていったのかを体現した複雑なキャラクター性を持っている。
「アリス」の重要なきっかけは、瑠璃子の失踪だ。彼女は失踪の直前、ホテルを探検したり謎めいた行動を取ったりしている。そして、それが悲しき結末へと続く予兆となっていた。
瑠璃子は表情豊かでありながら、どこか儚さを兼ね備えた女性で、それを演じ切った広瀬さんも強い印象を残している。
「私の宝物はここで朋子さんと過ごした時間。幸福で陰りのない子供の時間よ」と穏やかな表情で話していた一方、最期のシーンでは、自分の運命を受け入れられずに追い詰められていく姿をセリフではなく表情だけで表現した広瀬さん。登場シーンはあまり多くないが、そうしたひとつひとつの演技が印象的だった。
本格刑事ドラマとしての面白さはもちろん、個性的な登場人物も魅力の『相棒』シリーズ。各話のゲストとしてさまざまな俳優が登場することも見逃せない。今回紹介したように、ブレイク前の人気俳優たちの姿を見れるのも嬉しいところだ。
若き日の人気俳優たちの瑞々しい演技が見られるのも、長寿ドラマならではの見どころだといえるだろう。