ドラマ『相棒』はSeason23を迎え、加藤清史郎さんが同一のキャラクターで5年半ぶりに再登場したことも話題になっている。連続ドラマのスタートから25年目ということで、過去に登場していた俳優の数も膨大だ。
中には、ブレイクする前の人気俳優が出演しているエピソードもある。彼らの若かりし頃の姿や圧巻の怪演を見る事ができるのも、長寿ドラマだからこその本作の魅力のひとつといえるだろう。そこで今回は、実は『相棒』シリーズに出演していた意外な俳優たちを紹介していこう。
■小学生の犯人役を演じた染谷将太
Season1の第5話「目撃者」は、ファンの間でいまだに語り継がれている名エピソードだ。このエピソードで特筆すべきは、犯人が小学生である事だろう。犯人役を演じているのは当時10歳の少年であり、シリーズ史上最も若い犯人となっている。さらに驚くのは、犯人・守を演じているのが、当時子役として活動していた染谷将太さんであることだ。
染谷さんといえば、2011年に『ヒミズ』で第68回ベネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞し、その後も映画やドラマで幅広く活躍している実力派俳優である。さらに、大河ドラマ『麒麟がくる』では織田信長を演じ、「若い信長」という新たな信長像が印象的だった。
「目撃者」のストーリーはこうだ。ボウガンで小学校の教師が殺される事件が発生し、目撃者である小学生・手塚守に話を聞くことになった特命係。捜査を続けていくと、被害者は同僚の前原恭子とトラブルを抱えていたと分かる。そして、真相にたどり着いた右京は驚きの推理を披露する。犯人は守であり、前原を助けるために小学生でありながら計画的に殺人を犯したというのだ。
自供を引き出すために、あえて守の前で前原を追い詰めた右京に対して、「僕を上手くハメたね」と無感情に言い放つ染谷さんは、すでに演技派俳優の片鱗を見せている。子どもとは思えないほど冷静で、ある種の不気味さを感じさせる守の姿を、見事に演じ切っているのだ。
小学生が殺人犯という結末が衝撃的だったのはもちろん、その展開が説得力あるものになっているのは、染谷さんの素晴らしい演技あってこそだろう。
■不気味な連続殺人犯を好演したブレイク前の高橋一生
Season4の第4話「密やかな連続殺人」、第5話「悪魔の囁き」と2週連続で描かれたエピソードに登場するのは、実力派のイケメン俳優である高橋一生さんだ。
高橋さんは荒木飛呂彦さんの漫画を原作とする『岸辺露伴は動かない』シリーズで、独特な存在感を放つ岸辺露伴を見事に演じている。そんな彼が『相棒』で演じたのは、大学院生の精神科医助手・安斉直太郎である。
このエピソードは、荒川河川敷で若い女性の他殺体があがったことから始まる。遺体には片耳のピアスがなく、特命係はこれに着目。すると13年前にも同じような事件があり、右京の推理で長年おこなわれていた連続殺人が浮かび上がる。そこで有力な容疑者とみられたのが、村木重雄という男だった。
高橋さん演じる安斉は快楽殺人者・村木のカウンセリングを経験するうち、その悪に取り込まれてしまい、連続殺人を犯した危険な男だ。彼は普段は穏やかで人好きのする好青年なのだが、その裏には危険な殺人衝動を秘めていた。
ごく普通の青年が殺人衝動を抱くまでの過程を淡々とした口調で話し、徐々にその本性を見せていく高橋さんの演技には、思わず引き込まれてしまう。特命係に真相を暴かれ、「ひとたび怪物が目覚めたら自分ではどうすることもできなかった!!これは不治の病なんですよ、先生!」と激高し、最後には「僕は捕まらないよ」とビルから飛び降りようとする安斉。悪に魅了されてしまい、「あの人が呼んでるんだ」と死のうとする彼の姿は、悲壮感すら漂うほど哀れだった。
安斉は強烈な印象を残し、Season5の第5話「悪魔への復讐殺人」でも再登場している。その際には被害者になっていて、Season4の登場時の続編と位置づけられているために、通算3エピソードで高橋さん演じる安斉の姿を見られるわけだ。彼がそれぞれの回で見せるさまざまな表情から目が離せない。