■平次、安室、メアリーにはバレた!

 本作には高い推理力を持つキャラクターが数多く登場する。そんな彼らの前で不用意に「眠りの小五郎」の工作を披露すると、バレてしまうこともある。特によく知られているのが、西の名探偵・服部平次だ。

 彼は12~13巻収録の「ホームズ・フリーク殺人事件」で、コナンの正体を工藤新一だと見破っている。といってもこれは洞察によってというよりは、偶然の要素も大きい。

 この時コナンは平次を眠らせ、彼の声を出して推理を披露した。しかし、平次は途中で目が覚めてしまい、コナンが変声機で推理しているのを見てしまう。そしてその論理の組み立てから、「お前工藤やろ?」と完全に正体を見抜いたのだった。

 黒の組織に潜入している公安捜査官・安室透には、78巻収録「密室にいるコナン/謎解きするバーボン」で、腕時計型麻酔銃を使って小五郎を眠らせようとしたところを目撃されている。彼はそれ以前から眠りの小五郎の工作に気がついていた節もあるが、「何しているんだい?」と聞かれ、しどろもどろになってしまうコナンの様子を楽しんでいるようでもあった。

 MI6のエージェントであるメアリー世良には、バレているどころか蝶ネクタイ型変声機を使用されてしまっている。

 90巻収録「霊魂探偵殺害事件」にて、コナンが落とした蝶ネクタイ型変声機を拾ったメアリーは、鋭い観察力で眠りの小五郎の工作を見抜く。しかもその後、コナンの代わりに推理ショーを披露するという驚きの行動をとったのだ。

 他にも、赤井秀一や本堂瑛祐、世良真純など、鋭い観察力を持つ者にはバレていたり、怪しまれていたり、あるいはコナンの行動を予想していたりするシーンも目立っている。彼らの前ではもう少し慎重になった方がよかったのでは……と思ってしまう。

 

 眠りの小五郎のシーンは、『名探偵コナン』の見どころの一つでもある。ただ麻酔銃と変声機を駆使した工作は、時には正体がバレるきっかけにもなっていた。

「それはありえないのでは…」というツッコミの声も時には上がるが、そうしたリアリティーとコミカルな演出を絶妙なラインでキープしていることも本作の大きな魅力である。眠りの小五郎の工作がバレそうになるハラハラ感も見どころとして、楽しんでみるのも面白いかもしれない。

  1. 1
  2. 2