俳優の藤原竜也さんは15歳で舞台俳優としてデビューし、迫力の演技で評価を得て一気に注目を集めた。そこから精力的に俳優業をこなしており、ドラマ、映画と見ない年がないほどの活躍ぶりだ。
最近では、2024年秋ドラマ『全領域異常解決室』で主演を務め話題にもなっている。ミステリアスな雰囲気を漂わせ、淡々と長台詞を話す藤原さんの演技には思わず見入ってしまう……。
そんな藤原さんは、漫画の実写化作品を数多く演じていることでも有名だ。どのキャラもクセがあるタイプばかりで、演じ切れたのは彼の演技力があってこそである。
そこで今回は、藤原さんが過去に実写化作品で見せた名演技について振り返っていきたい。
■二面性の表現に震えた!『DEATH NOTE』夜神月
まず紹介したいのは、原作:大場つぐみさん、作画:小畑健さんによる『DEATH NOTE』の映画版。本作で藤原さんは主人公の夜神月役を演じている。
月は頭脳明晰かつスポーツ万能と何でもできてしまう「完璧人間」で、日常に退屈をおぼえていた。
このキャラの大きな特徴のひとつが二面性で、冷静と見せかけ不安定な部分が突然あらわれる。そのギャップが月を印象的かつ魅力的にみせているわけだが、藤原さんはその人間性を見事に表現していた。
多くの人間を淡々と殺しているのに、それを身近にいる人間に悟らせないようにする。そんな冷酷な部分と好青年の使い分けが絶妙で、いろんな人間が騙されて殺された時はゾッとしてしまった。
またライバルであるLを演じた松山ケンイチさんとのやり取りも、息がぴったりと合っていた気がする。言葉での駆け引きは最高だった。
そして、ラストでの死ぬ前に無様にのたうち回るシーンもさすがで、月の腐りきった性格を見事に表現している。普段は二枚目なのに、それをあっさりと崩してしまう演技に引き込まれてしまった。
そんな藤原さんの演技について、松山さんは「ずっとぶん殴られてる感じ」と語り、圧倒的なパワーを感じていたようだ。他にも映画『ノイズ』で15年ぶりの共演を果たした時には、演技が始まるとスイッチが入ったかのように別人のようになるところも高く評価している。
■ギャップが鮮やかだった『カイジ』伊藤カイジ
次は福本伸行さんの漫画を原作とする映画『カイジ 人生逆転ゲーム』のカイジを見ていこう。カイジは普段の生活では自堕落で頼りないのに、ギャンブルになるとまるで別人のようになる。
カイジが自身を騙そうとしてくる相手の心理を逆手に取って逆転する姿は爽快感しかない。先ほど紹介した夜神月と同じようにギャップを感じるキャラだ。
カイジに登場するギャンブルはほとんどが命がけで、負けたらすべてが終わり……。そういう意味でひりつくような緊張感がある。超高層ビルでの鉄骨渡り「ブレイブ・メン・ロード」はその最高峰で、藤原さんは次々と人が落ちていく中でのカイジをリアルに演じていた。
時に情けない姿を見せつつ、やる時はやる!といった覚悟も感じられ、終始手に汗握りながら見守ってしまう。だからこそ無事にゴールした時には、見ている側もカイジ同様に喜んでしまった。
他にも『カイジ2 人生奪回ゲーム』でのパチンコ勝負。こちらは勝てば10億、負ければ一生地下から出られないという大勝負だ。
ここでカイジは一度負けかけてから起死回生の逆転を果たすので、かなり盛り上がる。借金を完済し、地上に出られた時に仲間と一緒に合流して盛り上がるシーンも最高だ。
このように藤原さんは絶望と歓喜の演じ分けが見事で、見ている人の心をアツくさせる。個人的に好きなのは、カイジのクズな性格の演技。あまりにも原作に近いので思わずクスリとさせられてしまった。地下帝国にて、ビールに感動してこぼれた「キンキンに冷えてやがるっ………!」というセリフは、多くの人が真似したにちがいない。