■『空から降る一億の星』危険な雰囲気漂う男・片瀬涼
木村さんが明石家さんまさんとダブル主演を務めたドラマ『空から降る一億の星』は、2002年4月15日から6月24日までフジテレビ系で放送された。
明石家さん演じる刑事・堂島完三は、深津絵里さん演じる妹・優子と二人暮らしをしていた。完三はある殺人事件を追っていたが、その過程で木村さん演じる片瀬涼を怪しむように……。しかし、そうしている間に優子が涼と交流を深めていき、やがて3人は奇妙な関係でつながっていくことになる。
この作品の魅力は、登場人物がそれぞれ秘密を抱えていることだろう。涼は孤独を抱えながらも人をコントロールすることに長けており、女性にもモテる。しかし、彼の孤独を見抜き、同情するような言葉をかける優子に対して、涼は優子と一緒にいると普段の自分でいられなくなることを理由に拒絶するのだ。彼の弱さ、闇が垣間見える印象的なシーンだった。
木村さんと深津さんが繰り広げる大人な恋愛シーンも魅力の本作だが、最終的に予期せぬ展開が待ち受けている。涙なしでは見られない最終回の視聴率は27.0%を記録、有終の美を飾った。
明石家さんのシリアスな演技と闇を抱えた木村さんの演技のぶつかり合いはドラマ史にも残るほどであり、その後、2018年には韓国でもリメイクされるほどの高い評価を獲得している。
■『華麗なる一族』苦悩する御曹司・万俵鉄平
山崎豊子さんの小説が原作の『華麗なる一族』は、2007年1月14日から3月18日までTBS系で放送された。
本作は木村さんをはじめ、北大路欣也さんや鈴木京香さん、長谷川京子さん、山本耕史さんなど錚々たる顔ぶれが名を連ね、話題を呼んだ。
木村さん演じる万俵鉄平は、父で銀行家の大介と折り合いが悪かった。父に認められたいと思いながらも、鉄平は、銀行ではなく阪神特殊製鋼の専務としてその才覚を発揮していく。人望があり、経営の才覚もある鉄平だが、それでも大介は彼を認めようとしない。そして、その大介の態度に鉄平は追い詰められていってしまう。
本作では、強大な権力を持つ父に抗う強さを持つ鉄平が徐々に押し潰されていってしまう姿が丁寧に描かれている。当初、鉄平は「夢を見ることができなければ、未来を変えることはできません」と、金と人脈でのし上がってきた父親と正反対の考えを口にするほどの情熱を持っていた。
しかし、最終的には雪山に1人で行き、最悪の決断をしてしまうこととなる。「思えば僕の人生の中心にはいつも父がいた」と、最期の瞬間まで父との関係に翻弄され続けた鉄平の苦しみが描かれた最終話は、胸が痛くなってしまうラストだった。
華麗なる一族に生まれ、泥臭く会社を大きくしていこうとする姿が印象的なだけに、闇を抱える繊細な鉄平は魅力的なキャラクターだった。そんな彼をときにたくましく、ときに儚く演じた木村さんの演技も必見だ。
衝撃の結末を迎えた最終回の視聴率は30.4%を記録するなど、本作は平成を代表する社会派ドラマの金字塔となった。
闇を抱えたキャラクターを演じるのは、非常に難しいことのように思う。木村さんが演じてきたこうしたキャラクターたちは、哀しさとともに色気を持っているのも特徴的で、それも人々を惹きつける理由の一つとなったのだろう。
『ロングバケーション』や『ラブジェネレーション』のキラキラした主人公たちとは全く違う闇の深いキャラを演じる木村さんの色気、そしてミステリアスな表情・雰囲気をあらためて見てみてはいかがだろうか。