「常人では発想不可能…!?」『名探偵コナン』圧巻だった「スケールでかすぎ」のトリックの画像
少年サンデーコミックス『名探偵コナン』第86巻(小学館)

 日本を代表するミステリー漫画といえば、青山剛昌氏による『名探偵コナン』(小学館)を外すことはできない。100巻を超える発刊という偉業を成し遂げ、現在も連載中。作中では数多くの事件が解き明かされてきた。

 そのため、事件に使用されているトリックも膨大な数で、作者の発想力には毎度驚かされてしまう。その内容は仕掛けが小さいものから大きなものまでと幅広いが、特に印象的なのはやはり、常人の発想を超えるスケールの大きいトリックだ。

 そこで今回は、『名探偵コナン』に出てきたスケールの大きすぎるトリックを振り返っていこう。

■温泉の上を走る?「かまいたちの宿」

 まずは、コミックス86巻収録「かまいたちの宿」に出てきたトリックから。この事件の最大の謎は、「犯人はどうやって被害者を殺しに行ったのか?」だった。

 犯人が現場に行くためには露天風呂を通らなければならないのだが、容疑者は誰一人ずぶ濡れになっていない。そのため水の上を走るかまいたちの仕業では? という、オカルトめいた話にもなった。

 水の上を走ると聞くと、子どもの頃、足を速く動かせばできるかもしれないと思った覚えがある人もいるかもしれない。しかし当然ながら、そんなことを実際に行うのは無理な話である。

 作中でそれを可能にしたのが、「ダイラタンシー現象」を利用したトリックだった。この現象を簡単に説明すると、ドロッとした液体に強い力を加えると固体のように硬く反発するというものである。

 犯人は温泉の上を走ることで強い力を加え、反発を利用してその上を渡ったというわけだ。ちなみに、温泉のお湯をダイラタンシーにするため犯人が使ったのは、宿にある大量の葛粉だった。

 しかし、作中にあったように温泉でダイラタンシー現象を作るとなると、半端ではない量の葛粉が必要になるのは想像に難くない。作中では具体的な量には触れられていないが、いったいどれだけ使ったのか考えるだけで恐ろしい……。

 科学の要素も含まれているので、実験的な感覚で好奇心が湧き、思わず「ちょっとやってみたい」と思ってしまうトリックだった。

■巨大天狗が一瞬で消失!?「紅の修学旅行」

 続いては、94~95巻収録の「紅の修学旅行」で起こった事件のトリックだ。この事件では、ホテルの一室の天井に巨大な天狗が現れて、それがタバコの火によって一瞬で消え去ってしまった。

 犯人にはたくさんの人たちの前でそれを見せることで、自分が被害者のように思わせる狙いがあった。しかし、そのトリックも新一の手で解き明かされる結果となった。

 実は天井に現れた巨大な天狗は、手品などで使われているフラッシュペーパーで作られた造形品だった。フラッシュペーパーは火をつけると一瞬で燃えて消えてしまう。その特性を活かしたのだろう。かなり大掛かりなトリックだ……。

 作中に出てきた天狗はかなり巨大だったから、ひとりで準備するのは相当の時間と労力がかかったのではないだろうか。さらに一瞬の出来事だったとはいえ、見た者に「本当に天狗がいた!?」と思わせる完成度に仕上げているところもスゴい。

 大量のフラッシュペーパーを用意するだけでも大変そうだし、生半可な犯人では起こせなかった事件だといえるだろう……。

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