■部屋を満水にして遺体を吊るす…「霧天狗伝説殺人事件」

 最後は、コミックス11巻収録の「霧天狗伝説殺人事件」で使用されたトリックを見ていこう。この事件は、修行の間と呼ばれる、山寺の中にある独房のような部屋の梁に遺体が吊るされることで始まる。あまりにも高い場所に人をぶらさげるのが困難なために、古の魔物「霧天狗」の仕業ではないか……そんな風に思われてしまう。

 しかし、実際は犯人がゴムボートに遺体を乗せてから、部屋の中を山寺脇に流れている滝の水で満たし、梁の近くまで上がって遺体を吊り下げていた。そして天窓から外に出て、斧で小窓に亀裂を入れて水を排出することでトリックの完成となる。

 近くにある滝の水を流し込んで、自らが浮上して梁に近づくという考えはかなり斬新だった。水なら痕跡が残りづらい上に、このような方法で滝が利用されるなど考えもつかない。

 しかもコナンが部屋の大きさを見て、水の量と掛かる圧力を細かく解説していたから、少し勉強にもなった。 

 

 今回紹介したトリックはかなりスケールが大きく、現実的にはありえないものばかりだ。しかし、よく考えられたトリックなので、実験的な意味でワクワクさせられてしまう。今後も作中でどんなトリックが出てくるのか非常に楽しみだ。

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