シーズン23という驚異的な長期シリーズとなっている刑事ドラマ『相棒』。水谷豊さん演じる杉下右京とその相棒が所属する「特命係」が難事件を解決する、本格刑事ドラマである。
長い歴史を持つ本シリーズでは、数々の印象深いエピソードが生み出されてきた。改めて思い返してみると、最近のものより初期の頃の衝撃的な回をよく覚えていたりもする。そこで今回は、『相棒』シリーズ初期で印象的だった名作回をプレイバックしよう。
■犯人が小学生⁉Season1の5話「目撃者」
いまだにその衝撃の結末が語り継がれているのが、Season1の5話「目撃者」である。
小学校教師・平良がボウガンで撃たれ殺害された事件を捜査することになった特命係。彼らは、被害者の勤務先で容疑者を目撃した男子小学生・守に話を聞く。
徐々に被害者である平良の素行が悪かったこと、彼が同僚の前原に対して暴行を働いていたことなどが判明。そして捜査を進めるうち、右京は守が犯人という事実にたどり着いてしまう。
物語の終盤、特命係は前原を容疑者扱いして問い詰める。すると彼女を守りたい守は思わず、重大な証言をしてしまう。実は、すべては右京が仕掛けた罠だったのだ。それに対し守は「僕を上手くハメたね」と極めて冷静に話す。その淡々とした姿は子どもとは思えず、あまりにも不気味だった。
その後、右京は守の恐ろしい犯行を暴き始める。彼は計画的に平良を殺し、さらに別人を犯人に仕立て上げていたのだ。思わず前原が「もうやめてください!」と制止すると、右京は「僕だってもうやめたいッ!!」と叫ぶのだった。
続けて「したり顔で推理を披露するなんてマネは、したくてしているわけではありません!」と小学生を追い詰めなければならない心情を吐露する姿も、印象的である。
ちなみに、小学生にして殺人犯である守役を演じているのが、子役時代の染谷将太さんであるのも驚きだ。殺人を犯す少年という難役を演じ、すでに演技派俳優としての片鱗を見せていた彼の姿も見どころだった。
■少女の境遇がつらすぎる…Season2の15話「雪原の殺意」~16話「白い罠」
初代・五代目相棒である亀山薫と不良少女の交流を描いたSeason2の15話「雪原の殺意」と16話「白い罠」は、社会のあり方を考えさせられるエピソードだ。ストーリーの始まりは、薫がある少女を拘束する所から始まる。
少女は沙雪という名で、売春で逮捕されて公判前に逃亡していた。薫は右京の許可をもらい、札幌地検へと彼女を送り届けるために札幌へと向かう。しかし、そこで彼女の生い立ちを聞き、薫はどうにか彼女の人生を好転させたいと考え始める。
北海道の雪景色の美しさも印象的なこのエピソードは、『相棒』屈指の重い物語だ。沙雪はかつて父親が死刑囚になったせいで、売春に手を染めざるを得なくなった。さらに、愛した男は彼女を利用し裏切る。おまけに終盤では、いつもそばにいてくれた同級生が父親に殺された被害者の遺族・津村真二だと判明し、彼から命を狙われてしまうのだ。
沙雪には不幸が次々と訪れ、最後には死を受け入れようとさえするのだった。そんな彼女を殺そうとした津村の「僕が殺したかったのはこんな奴じゃない!これじゃまるで僕と一緒じゃないか!」というセリフは、加害者家族と被害者遺族の苦しみを反映した悲しき慟哭となっている。