ガンダム作品には、主人公に匹敵するライバルキャラが登場することは珍しくない。やはり面白い作品の条件のひとつに、魅力的な敵キャラの存在は欠かせないものだ。
そのためか主人公サイド、ライバルサイドを問わず、どちらの陣営にも圧倒的な強さを見せるシーンが描かれている。いわゆる「無双シーン」などと呼ばれるものだ。
代表的なところでいえば、『機動戦士ガンダム』の第33話「コンスコン強襲」が挙げられる。ジオン公国軍のコンスコン率いる艦隊がリック・ドム12機でホワイトベースを襲撃しながら、3分もかからずにアムロたちに全滅させられたシーンは視聴者にも衝撃を与えた。
しかし、それとは逆に、主人公のライバルたちによる無双シーンはどれだけあっただろうか。数あるガンダム作品の中で、とくに視聴者に絶望を与えたライバルの単騎無双シーンを振り返ってみたい。
■1機のザクで戦艦5隻を撃沈した「赤い彗星」
アニメ『機動戦士ガンダム』の主人公「アムロ・レイ」の宿命のライバルが「シャア・アズナブル」だ。彼の二つ名「赤い彗星」は、地球連邦軍とジオン公国軍が激突した「一年戦争」の序盤に起こった、「ルウム戦役」での活躍からつけられたものだ。
そのときの活躍ぶりは、劇場版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN VI 誕生 赤い彗星』で描かれている。
赤く塗られたMS-06S「シャア専用ザク」で出撃したシャアは、自ら機体のリミッターを解除し、性能限界のスピードをもって敵艦隊のいるルウム宙域へと急ぐ。
超高速で連邦艦隊の中央を突破したシャアは、連邦の主力巡洋艦「サラミス」に対して一方的にバズーカを食らわせて撃沈した。この時点での連邦艦隊は、シャアのザクを認識すらできていなかった。
その直後に「ドズル・ザビ」率いるジオンの主力艦隊も戦域に到着。攻撃艦とモビルスーツの波状攻撃により次々と連邦艦隊は撃沈されていく。
その中でシャアは、迎撃に出た敵戦闘機や敵艦をザクの踏み台にしながら、最小限の攻撃で的確に連邦艦を沈める。
シャアが操るザクの高速機動にはジオン側も驚きを隠せず、ジオンのエース部隊「黒い三連星」もその姿を見て、「通常の3倍のスピード、まるで赤い彗星だ!」と評した。
そして、そこから残弾3のバズーカで3隻の艦を沈め、トータル5隻の撃沈を達成している。
このルウム戦役におけるシャアの獅子奮迅の活躍は「シャアの五艘跳び」と呼ばれて伝説となった。この活躍によりシャアは二階級特進し、少佐へと駆け上がったのである。