■呪いのように繰り返される言葉の衝撃…『惡の華』

 その独特かつ斬新な表現によって、エンディングで視聴者の精神をおおいに揺さぶったアニメといえば、2013年に放送された『惡の華』ではないだろうか。

 原作は2009年から『別冊少年マガジン』(講談社)にて連載された押見修造さんの同名の漫画で、思春期を迎えた少年少女らの生々しい“負”の側面に焦点を当てた強烈な作品である。

 エンディングテーマにはASA-CHANG&巡礼さんの「花 ーa last flowerー」が起用されているのだが、この楽曲の斬新な表現方法は視聴者の度肝を抜き、衝撃を与えた。

 その方法とは、曲の冒頭からまるで壊れかけのレコードのように、不安定に、不規則に、断続的に歌詞が呟かれていくというものだ。黒背景にスタッフロールが流れるなか、加工された音声で幾度となく“言葉”が繰り返されるこのエンディングは、観る者に恐怖と不安を植え付けた。

 ちなみにこの曲が流れ始めるのは、主人公・春日高男が誰もいない教室で、ヒロイン・佐伯奈々子の体操袋が落ちていることに気付いた場面。結果的に彼はそれを盗んでしまうのだが、主人公のなかに“悪の華”が咲いた瞬間を、無機質な音声が強烈に印象付けている。

 エンディング突入時の演出やその後の無機質なスタッフロールも相まって、一度見たら忘れることのできない、まさに“トラウマ”級の一曲である。

 

 ストーリーの余韻を楽しみ、次回エピソードへの期待に胸を膨らませてしまうアニメのエンディングだが、ときには強烈な描写や曲によって視聴者に恐怖をもたらすものも……。

 アニメ放送当時、その衝撃的な内容がトラウマとなった視聴者も少なくはないだろう。だが、アニメ制作者たちのこのような工夫により「また見たい!」と、視聴意欲を掻き立てられるのも事実である。

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