■「湘北VS陵南」誰よりも早く切り替えをし、檄を飛ばした桜木
残り1つの県代表の座をかけて戦ったインターハイ神奈川県予選決勝リーグ「湘北VS陵南」。試合終了間際、檄を飛ばした桜木は素晴らしかった。
試合終了まで残り10秒を切る場面、ラストで桜木がリバウンドを押し込み、湘北のリードは4点に。その直後、油断することなく「戻れっ!!」「センドーが狙ってくるぞ!!」と陵南陣地に駆け戻る桜木。「おう!!」と、ほかの湘北メンバーもそれに応え、素早くディフェンスを構える様子が描かれている。
実は過去、陵南との練習試合で、湘北は同じような展開で陵南に逆転され敗北している。試合終了間際、桜木は覚えたてのレイアップシュートを決め逆転に貢献したものの「ハッハッハッ!!! やはり天才!!!」と浮かれて油断。その隙を突いた仙道に、あっさりと再逆転のシュートを許してしまっていた。
きっとこの苦い記憶が蘇ったのだろう。桜木の「戻れっ!!」というこの言葉から、バスケットマンとしての成長が感じられる。
さらに注目してほしいのは、この桜木の一声に、仙道がハッとした表情を見せていることだ。仙道は切り替えが早い、作中屈指のクレバーな選手だ。しかしこの描写から、桜木はそんな仙道よりも次の展開へ切り替えをしていることがわかる。
その後、試合終了までの詳細は描かれていないものの、桜木の一声もあり湘北メンバーは最後まで集中を切らすことはなかっただろう。そして、湘北は陵南を下し、念願のインターハイ出場を果たしたのである。
今回は、『SLAM DUNK』あの空白のシーンはどうだったのか「影の立役者」たちを考察してみた。
いずれも地味なプレイだったかもしれないが、試合終了間際の場面、勝敗に直結するような重要な必要なプレイであったように思う。このような考察をして楽しめるのも『SLAM DUNK』という作品が、色褪せない理由かもしれない。