あの空白のシーンにドラマが…『SLAM DUNK』勝敗を決めた「影の立役者たちの名プレー」海南大附属の高砂、湘北の木暮・角田も…の画像
『SLAM DUNK』 VOL.14(東宝ビデオ)

 1990年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された、井上雄彦氏の名作漫画『SLAM DUNK』。世代を超えて愛され続けている本作では、なんといってもバスケの試合中に躍動するキャラたちの姿が魅力的だ。一方で、時間経過やナレーションだけの演出で効果を出しているシーンも多く、詳細は描かれていないものの、実は試合の勝敗に大きな影響を与えたであろう選手たちがいる。

 今回は、そんな空白シーンでどんなスーパープレイが行われていたのか、「影の立役者」たちを考察してみたい。

■「湘北VS海南」ミスからはじまったが、その後しっかりボールキープした高砂

 インターハイ神奈川県予選「湘北VS海南」にて。試合終了間際、桜木のパスミスを受け、思わぬ“棚ぼた“で勝敗にかかわることになった高砂。

 あらためてこの一連のプレイを見ていきたい。

 2点ビハインドの湘北。桜木は残り6秒でリバウンドを制し、フリースローライン付近でボールを確保する。彼にはのちに会得する“ジャンプシュート”という武器はないため、最後は赤木にボールを託すことにした。その際起こったのが、この高砂へのパスミスだ。

 作中ではこのパスミスについての理由は言及されていないが、読者の間では髪型や体型などが赤木と似ていたためだと推察されている。

 また、実はこのとき牧と神がダブルチームで桜木を取り囲んでいる。桜木は早くパスしなければならないというプレッシャーで、パスを出す相手の上半身まで確認していなかった可能性もある。さらにこのとき桜木の目の前には牧。視界を塞がれていて苦し紛れに出したパスかもしれない。

 どちらにせよ、そういった状況でこのパスミスは起こった。作中では描かれていないが、おそらく高砂は残り数秒間ボールをしっかりキープし、試合を確実に終わらせたのだと思われる。

 ほかのチームのセンターに比べ派手さがなく、桜木にも「じいよりこいつの方が楽だぜ!!」なんて甘く見られていた高砂だが、素人同然の桜木にも全く油断を見せない堅実な性格なのが見て取れる。

 もしもこのとき湘北にボールを奪われたら逆転されていた可能性もあるなか、しっかりボールを守り切ったことが、結果、海南の勝利を確実なものとしたといえるだろう。とはいえ、あまりの出来事にショックを受け、湘北メンバーが足を止めてしまったことも、高砂がボールキープに成功した理由になるかもしれないが……。

■「湘北VS翔陽」途中交代で入り、しっかり試合を終わらせた木暮と角田

 インターハイ神奈川県予選決勝リーグ「湘北VS翔陽」にて。

 試合終了まで残り2分30秒の場面で三井寿がスタミナの限界を迎え途中交代、残り1分50秒に桜木が5ファウル退場と、立て続けにスタメン選手が試合から抜けた湘北。このピンチに、残りの時間をしっかりと務めたのが木暮公延と角田悟だった。

 3年生の木暮は、湘北のシックスマンとしてほかの控え選手と比べ出場回数も多く、陵南戦でもインターハイ出場を大きく引き寄せる3Pをも決めている選手だ。一方、2年生の角田は桜木が戦力に加わってから控えに回り、それから出場機会もほとんどなくなっている。しかし身長180cmのセンター、湘北では貴重なインサイドプレイヤーである。

 原作で残り1分50秒の試合展開は詳しくは描かれていないが、この時点で湘北は60ー62とわずか2点のリードだけ。いつ逆転されてもおかしくない状況だった。

 おそらく翔陽のポイントゲッターのセンター・花形透と藤真健司は、引き続きスタメンの3人がしっかりと抑えたのだろう。そして、交代で入った木暮と角田がそれぞれフォワード・長谷川一志とセンターフォワード・高野昭一とマッチアップしたのではないだろうか。

 どちらもそこまで得点力の高い選手ではないが190cmを超える大柄な選手で、木暮178cm、角田180cmにとって脅威だったことは間違いない。

 作中では「県No.2翔陽のプライドをかけた猛攻に最後まで耐えぬいた」とナレーションが入っていたが、最終的に62ー60でスコアは動かず、湘北が勝利している。

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