松本零士さんの『銀河鉄道999』は、宇宙を旅する少年・星野鉄郎と、謎の美女・メーテルの冒険を描く壮大なSF物語だ。2人は銀河鉄道999号に乗って宇宙の旅を続けるのだが、そこには鉄郎が抱く“機械の体を手にする”という目的があった。
鉄郎が機械の体になることができれば、母親を殺した憎き機械人間たちにも復讐ができ、しかも永遠の命も手にすることができる。しかし本作を読み進めてみると、実は機械の体は便利ではなく、意外とデメリットのほうが大きいのでは?と思えるシーンも多い。
今回はそんな機械の体を持つ人間たちの4つの悩みを紹介したい。
■かなり大きなデメリット…「味が分からない」
コミックス第1巻「出発のバラード」で、999号に乗り込んだ鉄郎はメーテルからお弁当をもらう。このときメーテルは「今度ここへもどって このお弁当を食べる時があっても、その時はあなたの口も舌も機械になっていて、もう味はわからなくなってる」と、言っている。この言葉から、機械の体になると味覚自体がなくなってしまうことが分かる。
食べ物を摂る必要がなくなったら、コストもかからないし体型も維持できるだろう。しかし、食欲は人間の三大欲求の一つだ。美味しい物を食べるだけで幸福感を得ることもできるし、ストレス発散や自分へのご褒美のために好きな物を味わい、楽しむ人も多い。
人間にとって、食べることは生きる気力に直結している部分もある。機械人間となって味が分からなくなり味わう喜びがなくなってしまうのは、やはりかなり大きなデメリットであると言えるだろう。
■機械人間の体になると「血が通わず体が冷たくなる」
体が機械化してしまえば、当然ながら血が通っていないため体は冷たくなる。それを証言しているのが、コミックス第1巻に登場する「透明の女 ガラスのクレア」に登場するクレアだ。
クレアは母親が見栄っ張りだったために、ガラスの体にさせられてしまった悲しい女性だ。作中、彼女は鉄郎の手を触り「あなたの手はあたたかいわ」と、喜ぶ様子を見せている。
ただし、機械人間も体内のヒーターを使えば体を温められる。同じく第1巻「迷いの星の影」に登場する機械人間たちは、実際、極寒の星でも体内ヒーターを作動させ平気に生活していた。だが、そこで出会ったシャドウという機械人間の女性も、鉄郎の体の温かさを気持ちいいと発言している。
やはり通電して体を温めるのと、生きていて血が通う温かさは違うのだ。それはカイロを抱きしめるより、人や動物を抱きしめたほうが温かいと感じるのと同じだろう。人間にとっては人工的な温かさより、やはり体温のほうが魅力的なのだ。
さらに、機械人間の持つ体内ヒーターはよく故障するとメーテルは説明している。なんらかの不具合が起こったとき、体はどうなってしまうのだろうか。人工的な温かさを得るためのツールにまでリスクを抱えながら、機械化する意味はあるのだろうか。