■多くの人々が目撃した「奇跡の光」
続いて劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の最終盤で、主人公アムロ・レイとその乗機「ν(ニュー)ガンダム」が引き起こしたとされる奇跡だ。
シャア・アズナブルは、小惑星「アクシズ」を地球に落下させる作戦を敢行。破壊されたアクシズの一部は地球への落下は免れないと思われた。しかし、シャアのサザビーとの一騎打ちを制したアムロは、νガンダムでアクシズの表面に取りつき、機体のパワーで押し戻そうとする。
そのアムロの行動に感化された連邦の機体だけでなく、ネオ・ジオンの機体までもがアムロと同じ行動をとる。両軍の兵士たちが、自分の無茶な行為につきあうのを見てアムロが感情を爆発させたとき、νガンダムを中心に謎の発光現象が発生。νガンダムの周囲にいたモビルスーツをアクシズの表面から弾き飛ばしていった。
さらに、その優しい光は輝きを増すと、アクシズ全体を包みこんでいく。すると信じられないことに地球に落下するはずだったアクシズは、なぜか落下軌道から逸れていった。
卓越したニュータイプ・アムロの存在、サイコフレームを搭載したνガンダム、そして集まった人々の感応波が増幅されたことにより起こった奇跡などといわれているが、実際のところ明確な発生理由は分かっていない。
■「可能性の獣」が起こした、いくつもの奇跡
最後は『機動戦士ガンダムUC』で、主人公のバナージ・リンクスと乗機「ユニコーンガンダム」が起こした奇跡にも触れておこう。
物語の最終盤にて連邦やアナハイムの上層部は、物語の鍵をにぎる重要機密「ラプラスの箱」のあるコロニーごと破壊しようと大量破壊兵器「コロニーレーザー」を発射する。
そのとき、ユニコーンガンダムに乗るバナージは、ユニコーンガンダム2号機「バンシィ」とともに、サイコフレームの共鳴が引き起こす「サイコ・フィールド」を発生させた。
その力は巨大なバリアを構築し、艦隊を丸ごと消し去るほどの威力を誇るコロニーレーザーの力を相殺、見事コロニーを守ってみせる。
これだけでも、アムロが発端となった「アクシズショック」級の奇跡ではあるが、バナージとユニコーンガンダムは、さらなる奇跡の力を発現する。
このときのユニコーンガンダムは「サイコフレーム」から謎の光の結晶体を発生させており、迫りくるモビルスーツ隊に手をかざすだけで、その動きを停止させたのである。
このような人智を超える奇跡を起こしたユニコーンガンダムは、「シンギュラリティ・ワン(技術的特異点)」と呼ばれて危険視された結果、解体・封印されたという。
こうした「ニュータイプ」と呼ばれる人たちが起こした奇跡的な現象は、ガンダム作品の中でたびたび見受けられる。『ガンダム』におけるオカルティックな描写に賛否の声があるのも事実だが、これもまた宇宙世紀作品ならではの事象のひとつといえるだろう。