テレビアニメ『機動戦士ガンダム』から始まった「宇宙世紀」という時間軸で描かれるシリーズの中で、「ニュータイプ」という言葉は重要な意味を持つ。いまだ、その定義は曖昧なままだが、ジオン・ズム・ダイクンは「宇宙という空間で生きていくために必要な、高い洞察力と状況認識力を持つ」(講談社刊「総解説ガンダム事典』より引用)と提唱したという。
テレビアニメシリーズの主人公アムロ・レイやカミーユ・ビダン、ジュドー・アーシタらはニュータイプとされ、モビルスーツのパイロットとして頭角を現す。
しかしシリーズが進むにつれて、ニュータイプが持つ意味は拡大していく。さらにニュータイプのパイロットたちが乗る機体性能の大幅な向上もあってか、まるで人智を超えた力のように見える場面もあった。
そこでアニメ作品のニュータイプ主人公たちと愛機であるガンダムが起こした、「奇跡のような現象」を振り返ってみたい。
■最高のニュータイプが起こした「不思議な現象」
まずはアニメ『機動戦士Zガンダム』の主人公で、『ガンダム』の生みの親でもある富野由悠季監督が「最高のニュータイプ」と評したとされるカミーユ・ビダンと、その愛機「Zガンダム」が起こした現象から見ていこう。
カミーユは、アニメの第1話からクワトロ大尉こと「シャア・アズナブル」が近くにいることを視認せずに感じ取るなど、ニュータイプの片鱗を見せていた。そして、その能力がZガンダムを通じて爆発したのが、最終盤の49話と50話のことである。
何度もカミーユとZガンダムを苦しめたティターンズのヤザン・ゲーブルに対し、カミーユの怒りが爆発。それに応えるかのようにZガンダムは、見たこともない謎の光に包まれる。
その光は、ヤザンが乗るハンブラビが放ったビームを弾き、撤退しようとするヤザンの機体を、通常の何倍にも巨大化したビームサーベルで斬り裂いた。
そして最終話でカミーユは、パプテマス・シロッコと対峙する。Zガンダムとシロッコの乗機「ジ・O」は一進一退の攻防を繰り広げるが、他者を駒のように扱ったシロッコの傲慢さにカミーユは再び激怒。戦場で散っていった者たちの魂がカミーユのもとに集結するような描写とともに、ジ・Oは不可解な動作不良を起こす。
その隙にZガンダムは「ウェイブライダー形態」でジ・Oのコックピットに突撃。シロッコの体を串刺しにして勝利をおさめた。
突然ジ・Oが動かなくなった現象についてはさまざまな憶測が飛び交ったが、最近のコミックなどでは「2機に搭載されたバイオセンサーの共振」が理由ともいわれている。