11月8日・9日に武道館にて29年ぶりのライブを行うとんねるず。デビュー以降、伝説的な番組を多数生み出してきた2人だが、そのひとつが、1987年から1994年にかけて、フジテレビ系で放送されていた『ねるとん紅鯨団』だ。
司会のとんねるずの名前をもじった言葉「ねるとん」と、前番組『上海紅鯨団が行く』を掛け合わせた個性的なタイトルのバラエティで、企画の1つだった集団お見合いコーナーが爆発的なヒットを記録。当時、カップルの予想を立てながら、見ず知らずの男女が繰り広げる恋愛サバイバルに夢中になったという視聴者は多いのではないだろうか。
“ねるとん=集団お見合い・カップリングパーティ”というイメージは世間にも浸透し、番組からは現在でも使われるような流行語も誕生した。今回は、そんな『ねるとん紅鯨団』を振り返ってみよう。
■見どころは「ちょっと待った!」『ねるとん紅鯨団』とは
1973年の『プロポーズ大作戦』などを筆頭に、恋愛バラエティは視聴者の心を掴む。中でも『ねるとん紅鯨団』は、土曜23時という深夜帯&30分という短時間にも関わらず、平均視聴率17%、1989年には24.7%というゴールデン帯に匹敵する高い数字を記録し、伝説的番組となった。
構成・ゼネラルディレクターは、テリー伊藤こと伊藤輝夫さん。それまでのお見合い番組は「芸能人が出演者をリードしてお見合いさせる」というスタイルが多かったが、この番組は「素人出演者が自由に動き、芸能人がサポートする」という構成。これが非常に画期的で、視聴者が出演者のリアルな恋模様を覗いている気持ちになるのである。
当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったとんねるずの人気も、大きく影響していただろう。2人が出演者の個性を引き出し面白おかしくいじることによって、彼らたちにも笑顔が増え、番組が盛り上がった。
さて、お見合いは、車・高校生・季節のイベントなど、毎回違うテーマで集められた男女十数人ずつで行われる。最初に男性陣のプロフィール公開ととんねるずによるインタビューが入り、女性陣のプロフィールに移っていく。この時のタカさん恒例のセリフ、「タカさんチェーック!」は番組の看板にもなった。
対面後はフリータイムに突入するが、イケメン・美女に人気が集まるのは今も昔も変わらない。とんねるずは彼らの動向を見守りつつ、動けない人のフォローをしていた。
後半は待ちに待った告白タイム。基本は男性が女性の前に立って思いを告げ、プレゼントや手を差しだして返答を待つ。そして、ここで番組最大の見どころ「ちょっと待った!」の登場だ。男性陣はこれを叫ぶと、告白に割り込めるのである。モテ女性に数人からのコールが入ったときは、大いに盛り上がったものだ。
返答は「ごめんなさい」もしくは、手を取ってカップル成立。数組が成立する時もあれば全滅回もあり、視聴者のドキドキは最後まで止まらなかった。
■流行語の玉手箱!あの言葉はここから生まれた
『ねるとん』では、先ほどの「タカさんチェック」「ちょっと待った!」をはじめ数々の流行語が誕生した。特に「ちょっと待った!」は当時の若者の間で流行り、日常生活の中でネタとして使う人も多かった。
さらに、令和の今でも普通に使われるほど一般に浸透した言葉もある。たとえば「彼女・彼氏いない歴」だ。この言葉は、とんねるずが出演者にシングル期間を聞くために使いだしたもので、いない歴=数か月から、いない歴=年齢という人まで様々な人物が登場した。
また、異性と2人きりになることを「ツーショット」と言うが、実はこれも『ねるとん』生まれ。もともとは2人の人物を1つの画面に入れることを指す和製英語の撮影用語だったが、とんねるずが番組のフリータイム中に話し込む男女にこの言葉を使ったことで別の意味が広がった。1990年には「現代用語の基礎知識」にも掲載されている。
「大どんでん返し」も、番組で話題を集めた言葉の一つだ。元々は仕掛けをひっくり返して舞台を変える歌舞伎用語だが、「状況がひっくり返る」という意味で使われることが多い。タカさんは、カップル成立間違いなしと思われていた男女がダメになった時などに、「大・どん・でん・返し!」と使い、告白を盛り上げていた。