2024年8月29日に、シリーズ最新作となる『聖剣伝説 VISIONS of MANA』が発売され、久々に注目を集めた『聖剣伝説』シリーズ。
1993年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)からスーパーファミコン用ソフトとして発売された『聖剣伝説2』から人気に火がつき、魔法やアイテムをスムーズに使用できる「リングコマンド」など、小学生にもとっつきやすいシステムを採用。また、3頭身の可愛らしいキャラクターやファンタジックな世界観の冒険は子どもたちにも馴染みやすいもので、『聖剣伝説』シリーズを子どもの頃に夢中になって遊んだ覚えがあるという人も多いのではないだろうか。
だが『聖剣伝説』シリーズは、その世界観からは想像できないような怖さを盛り込んでおり、当時の小学生プレイヤーにトラウマを植えつけたボスキャラたちが登場したシリーズでもあった。
■恐ろしい姿と独特のBGMが怖すぎた「ダークリッチ」
たとえば、前述した『聖剣伝説2』で、ボスキャラ「ダークリッチ」に恐怖の思い出があるという人は少なくないはず。
同作の物語は、少年ランディが偶然、聖剣を抜いてしまった場面から始まる。剣を抜いたことがきっかけで魔物が暴れ出し、ランディは村を追い出されてしまう。その後ランディは、魔女討伐に向かった恋人ディラックを探して旅に出た少女・プリム、故郷に帰れなくなってしまった妖精の子ども・ポポイと出会い、長い旅に出るが、その途上でヴァンドール帝国の世界征服の陰謀を阻止する戦いに巻き込まれることになる。
ダークリッチとの戦いはストーリーの終盤。ヴァンドール帝国の企みは、帝国四天王の一人・タナトスが黒幕であり、その正体がダークリッチであった。タナトスはディラックに乗り移りその肉体を奪おうとするが、ディラックが自分自身の命を犠牲にしてそれを阻止し、ランディたちとのバトルになる。
このダークリッチ戦のBGMが非常に怖い。ここまでのボス戦のBGMはアップテンポで高揚感のある曲調で、テレビ画面の前のプレイヤーの気持ちを奮い立たせてくれる神曲でもあった。
だが、このダークリッチ戦のBGMだけはこれまでとは違う。率直に言えば「不気味」。
インドネシアの男声合唱の「ケチャ」を取り入れたというファミコン時代からは考えられなかった曲調で、その不気味な曲をバックに、骸骨姿のダークリッチが襲いかかるのである。小学生プレイヤーは、早く戦闘を終わらせたいとコントローラーを叩きまくっただろう。戦闘終了後、恋人を失って泣き崩れるプリムの姿の悲しさもあって印象的なボスキャラであった。
■強力な必殺技でまさかの即全滅「獣人ルガー」
1995年に発売された『聖剣伝説3』も恐ろしいボスが登場した名作だ。
同作は、選んだメンバーによってストーリーの展開が変わる「トライアングルストーリー」と呼ばれるシステムを採用。草原の王国フォルセナの傭兵デュラン、魔法王国アルテナの王女アンジェラ、獣人と人間の間に生まれたハーフであるケヴィン、光の司祭の孫であり、エルフの血を引くシャルロット、ナバール盗賊団の一員であるホークアイ、風の王国ローラント屈指の槍の使い手である少女リースという6人の魅力あふれるキャラクターから3人を選ぶことができ、プレイヤーそれぞれに推しキャラがいたはず。
クラスチェンジをすることで強力な必殺技を使えるようになることから、早くクラスチェンジするために当時の小学生たちは一生懸命敵と戦いレベルアップをしたことだろう。
そして、ちょうどクラスチェンジをして強くなった頃に戦うことになるボスキャラが、ケヴィンのライバルでもある「獣人ルガー」である。
動きも素早く攻撃力も高い強敵なのだが、何よりも当時の子どもたちを驚愕させたのが「青竜殺陣拳」「朱雀飛天の舞」という超強力な必殺技である。
一度発動すると回避不能なこの技はクラスチェンジをした3人のHPを瞬時に0にしてしまうほどの破壊力があった。そのため、HPを常時満タンに保ちつつ、なんとかしてその攻撃力を下げるか、自分たちの守備力を上げるかを考えながら、同時に攻撃を加える必要があったのだ。
それでもなかなか勝てず、当時の子どもたちに強すぎるボスとしてトラウマを植えつけた。
実は獣人ルガーはこちらが放つ魔法攻撃やレベル2以上の必殺技に対し、カウンターとして「青竜殺陣拳」や「朱雀飛天の舞」を返してくる仕様だったのである。
そんなことは知るはずもない当時の小学生は、クラスチェンジして覚えた強力な必殺技を使いたいがため、ルガーに対し必殺技を放つのだが、それが罠。意気揚々と攻撃したすぐ後、見事な反撃にあい、その強さに震え上がった。
必殺技や魔法を使わずに戦えばそこまで強くないということを知ったのは、恐ろしさを克服し、ゲームでの冷静さを覚えた大人になってからである。