1989年から連載が始まった、ジャンプ黄金時代の名作ファンタジー『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)。今年連載35年を迎えた本作には、「クロコダイン」というキャラクターが登場する。
「百獣魔団」の軍団長としてダイの前に立ちはだかり、戦いを経て改心。その後は鋼の肉体と武人たる高潔な精神で勇者パーティーの頼れる仲間となった男だ。
そんなクロコダインだが、実は読者の間で「噛ませ犬」「あまり強くない」と言われることも多いようだ。確かに原作を読み返してみると、そう思われても仕方ないシーンも多いが、本当にそう言い切って良いのだろうか?
今回は、クロコダインの活躍を確認し、そのスゴさをあらためて振り返っていきたい。
■バランにミストバーン…そもそも相手が悪すぎる
クロコダインが“噛ませ犬”と呼ばれやすい理由のひとつに、勝率の悪さが挙げられる。新たな強敵に屈強な肉体で戦いを挑むも、あっけなく返り討ちに遭うパターンがとにかく目立つ。「ぐわああああッ!!」と断末魔の叫びをあげるクロコダインを、仲間が気遣う流れはお約束だ。
だが、クロコダインがやられた相手を見てみると、竜騎将バランや大魔王バーンの側近ミストバーンなど、魔王軍でも指折りの強者に倒されているケースが多い。
バランに至っては、自分の竜闘気(ドラゴニックオーラ)を突破しうるクロコダインのパワーを評価しており「ヤツのようなタイプが一番恐ろしい」と語っている。作中ではバランに圧倒されたクロコダインだが、むしろ警戒されていたから徹底的に叩かれたというワケだ。
「クロコダインは強くないからよくやられる」ではなく「クロコダインが主力だからこそ強い敵とぶつかりやすい」と考えてもいいだろう。
■ゲームだったら絶対戦いたくない…ギガブレイクを2発耐える驚異のタフネス
敗北シーンが多いクロコダインだが、こうは考えられないだろうか? 「何度も負けてるのに再起不能にならないって逆にすごくない?」と。クロコダイン最大の長所は、獣人ゆえの耐久力だ。
彼のタフさを語るならば、バランとの2度目の戦闘は外せない。記憶喪失のダイを守るため、レオナとともにバランの前に立ちはだかるクロコダイン。戦闘力ではとてもバランに及ばないクロコダインがとった戦法は「ひたすら耐えてバランを疲れさせる」というものだった。
全力で防御に回ったクロコダインは、バラン必殺の魔法剣“ギガブレイク”を2度も受けとめる。「バラン…ギガブレイクでこい…!!」と挑発するクロコダインは、文句なしにカッコいい。ほかの誰にも真似できない、クロコダインだけの戦い方だ。
これは余談だが、クロコダインは敵を麻痺させる“焼けつく息(ヒートブレス)”も使える。無類のタフネスでなかなか倒せず、“焼けつく息”で行動も縛ってくるクロコダイン……ゲームでは絶対に戦いたくないボスだ。『ダイの大冒険』が漫画でよかった……。