■作中きっての人格者…魔王軍での評価が高すぎる

 クロコダインは仲間からはもちろん、敵である魔王軍から認められている描写も多い。
 たとえば先に取り上げたバランは、“魔王軍六団長の中ではクロコダインをもっとも高く買っていた”、と発言している。

 さらに2度目の戦闘ではクロコダインの覚悟を前に、「天下の獣王クロコダインがこの場で捨て石になろうというのかっ!!?」と狼狽し、クロコダインにそこまでさせる息子に思いを馳せるシーンも登場している。

 ほかにも不死騎団長だった頃のヒュンケルが「尊敬に値する男」と言っていたり、ハドラーがクロコダインの裏切りに動揺していたり、敵味方問わず高く評価されているのがクロコダインという男なのだ。

 クロコダインがここまで一目置かれるのは、戦闘の実力のみならず、優れた人格が大きい。強者との真っ向勝負を望む武人らしい気高さに、竹を割ったような豪快な人柄……殺伐とした魔王軍において、こうも気持ちのいい快男児はクロコダインだけだったのかもしれない。

■ヒュンケル救出がファインプレー! 年長者として仲間を導く

 クロコダインの人格者としての一面は、勇者パーティーに入ってからも大いに活かされている。とくに目立つのが、ダイやポップら年下のメンバーを支え、ときに導く年長者としての活躍だ。

 特筆すべきは魔王軍時代のヒュンケルの救出だろう。ダイに敗れて溶岩の海に沈みゆくヒュンケルを命がけで救い出したクロコダイン。

 そして、自分の罪の大きさに打ちひしがれるヒュンケルに「オレは男の価値というのは どれだけ過去へのこだわりを捨てられるかで 決まると思っている」と諭し、ダイのために共に戦おうと説得するのだ。

 ここでクロコダインがヒュンケルを心身ともに救っていなければ、この後の戦いは非常に苦しいものになっていたに違いない。

 しかし考えてみるとクロコダイン自身もヒュンケルに殺されかけた過去があるのに、男として器が大きすぎるだろう。

 

 クロコダインは確かに勝ち星が少ない。しかし、簡単に倒れないタフネスや敵味方問わず尊敬を集める精神性は作中随一。彼の働きが勇者パーティーの窮地を救ったことも一度や二度ではない。そのいぶし銀な活躍と人柄のファンだという読者だっている。

 単純な戦歴だけでは測れない男。それがクロコダインなのだ。

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