■江戸から現代まで変わらぬ「旬のもの」を描く浮世絵
こうしたアニメと浮世絵のコラボはどういった経緯でスタートしたものなのか。最初は30年ほど前、高齢化する職人たちに仕事を与えるために、『機動戦士ガンダム』を浮世絵にする企画を思いついたのだそう。
「仕事がないということは弟子を取れないということでもあります。つまり、後継者を育成できず技術が途絶えてしまう。それで何かしなければと考えたときに、そもそも江戸当時、浮世絵は“旬”のものを描いていたものでしたから、であれば今なら日本が誇る漫画・アニメがそれに当たるのではないかと思いついたんですね」
だが、最初に『ガンダム』の浮世絵企画をバンダイ(現バンダイナムコエンターテインメント)に相談した際は「ガンダムが浮世絵になる」イメージが伝わらず頓挫してしまったのだとか。
「その後、無事にコラボをさせていただきましたが、当時はまだ、このようにアニメと浮世絵のコラボの前例がありませんでしたから、難しいものでした。一番初めに手がけたのは15年ほど前の手塚治虫先生の作品ですね。その後に『ドラえもん』『スターウォーズ』を浮世絵にしたことでようやく我々の仕事が広く認知されていきました」
技術を継承するためには仕事をとらないといけない。売るものは映画や漫画とのコラボ。そうして版三の浮世絵は“今の旬のもの”を描いてきた。江戸時代には“旬の役者”だったところが“旬のキャラクター”に置き換わっているのだ。現代の流行りが技術とともに後世に伝わっていく、写真とはまた違う歴史の残し方だ。
「北斎や広重は今世界中で認められています。今、職人さんに彫って摺っていただいているものが100年後、200年後に、“2000年初期の浮世絵いいよね”と評価される。僕らが目指すところはそこにありますね」
2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は、歌麿や写楽といった浮世絵師たちを世に出し、華やかな江戸の文化を後世に伝えた蔦屋重三郎を描く物語。そこから時代は200年以上が過ぎたが、さらなる未来に向けて職人が技術を継承し、それをアニメとのコラボという形で浮世絵をプロデュースする坂井氏は、まさに現代の蔦屋重三郎と言えるのかもしれない。
■クレヨンしんちゃん浮世絵木版画「東海道五十三次内 原 朝之富士」
販売価格:50,000円(税別・送料別)
販売数: 300部
発売元:株式会社 版三
サイズ(絵):縦22.0㎝×横34.8㎝(富士山部分:縦23.4㎝)
サイズ(額):縦41.4㎝×横52.9㎝×厚さ2.1㎝
素材(額装部分):木材、アクリル
和紙(絵):人間国宝 岩野市兵衛 越前生漉奉書https://www.ukiyoework.com/view/item/000000000236