■大器晩成だった「何でも屋」
次に紹介するのは「ジョブ・ジョン」だ。彼はホワイトベースのクルーのなかでも数少ない正規軍人だった人物である。
劇中では「ガンタンク」のサブパイロットや艦の砲撃手、見張り役など、多岐にわたって活躍。いわば「何でも屋」的な存在だった。
そして、一年戦争後のジョブ・ジョンの動向は、漫画『機動戦士ガンダム ピューリッツァー アムロ・レイは極光の彼方へ』や『機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー カイ・シデンのメモリーより』(ともにKADOKAWA)で知ることができる。
一年戦争のあと、故郷に帰って英雄として持ち上げられたジョブ・ジョンは、やがて正規軍人として目立った活躍がなかったことを責められ、軍を退役した。
その後は宇宙でのゴミ拾いや、作業用MSの操縦などの職を転々としていたが、彼と同じく正規軍人でホワイトベースのクルーだった「オムル・ハング」と再会する。
オムルは、のちに「F91」を開発する連邦の兵器研究機関「サナリィ」に所属しており、ジョブ・ジョンをサナリィにスカウトした。
こうしてサナリィに入ったジョブ・ジョンは、優秀なエンジニアとして頭角を現す。やがてガンダムF90の開発責任者に就き、F91の機体設計にも携わったとされている。
その結果、ジョブ・ジョンはサナリィの重役にまで上りつめ、まさに大器晩成の人物といえるだろう。
■かつてのおてんば娘は、美しき文筆家へ
最後に紹介するのは、ホワイトベースに収容された戦災孤児のひとりだった「キッカ・キタモト」だ。一年戦争後に結婚したハヤト・コバヤシとフラウ・ボゥの養子になり、「キッカ・コバヤシ」となる。
アニメ『機動戦士Zガンダム』にも登場し、母親となったフラウらと一緒に軟禁状態にあった「アムロ・レイ」のもとを訪ねていた。
その後のキッカの動向は、漫画『機動戦士ガンダム ピューリッツァー アムロ・レイは極光の彼方へ』(漫画:才谷ウメタロウ氏、脚本:大脇千尋氏/KADOKAWA)に描かれている。
同作の舞台は、第二次ネオ・ジオン抗争を描いた映画『逆襲のシャア』の直後であり、戦闘中に行方不明になったアムロが「戦死」認定されるというニュースから物語は始まる。
このときキッカは大学生で、在学中に作家デビューを果たしている。しかし世の中の著作物で英雄として扱われるアムロに違和感をおぼえた彼女は、すでにジャーナリストとしての地位を築いていたカイ・シデンの助力を受け、実際にアムロの足跡をたどって彼の実像を記すことを志す。
そしてキッカは、アムロと近しい関係だった「ジョブ・ジョン」や「セイラ・マス」、「ベルトーチカ・イルマ」らにインタビューを行っている。
ホワイトベースのクルーのなかでも、アムロやブライトの活躍ぶりは誰もが知るところ。しかし、それ以外のクルーたちに光をあてた外伝ストーリーにも興味深いものは多い。初代ガンダムの頃の彼らと、成長した彼らの姿を見比べてみるのも、おもしろいのではないだろうか。