1988年に公開された劇場版アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場する「ν(ニュー)ガンダム」は、全ガンダムシリーズのなかでも屈指の人気を誇るモビルスーツといえるだろう。
伝説のニュータイプパイロット「アムロ・レイ」が最後に搭乗した機体ということもあるが、「初代ガンダムの正統進化」「アシンメトリーが生み出す絶妙なデザイン」「劇中での目を見張る活躍シーン」など、心惹かれるポイントは枚挙にいとまがない。
そこで今回は、『逆襲のシャア』劇中のνガンダムのシーンを深堀りしながら、映画を観た人もつい見逃しがちな「細かい設定」を振り返ってみたい。
■突貫作業で「3か月納品」を実現?
まず、νガンダムの驚愕ポイントのひとつ目として、開発および製作期間の短さが挙げられる。νガンダムは「わずか3か月」という期間で開発され、アムロはろくにテストも行わずに実戦投入に至ったのは劇中で描かれたとおりだ。
参考までに『ガンダム モビルスーツバイブル 04号』(デアゴスティーニ・ジャパン)によると、Zガンダムの開発期間は「Z計画」発足から約1年6か月となっており、それと比較するとνガンダムは、いかに短い期間で実戦投入に至ったのかお分かりいただけるだろう。
ここまで開発期間を短縮できた理由としては、変形や合体機構を採用せず、基本的な人型フレームを採用したこと、可能な限り既存のパーツや製造ラインを流用したことなどが挙げられる。
さらに「1/144 HGUC νガンダム」のプラモデルの説明書によると、開発に携わったアナハイムエレクトロニクスや連邦エンジニアたちの「不眠不休の努力の賜物」という理由も示されている。
たしかに劇中でも、アナハイムの開発責任者「オクトバー・サラン」が納期を10日繰り上げられたことを嘆くシーンがあり、どれほど現場が切迫していたかが伝わってくる。
νガンダムの受領に向かったアムロは、「実戦装備にあと3日は必要です」というオクトバーの意見を即却下。現地での調整もそこそこに、強引にνガンダムを起動して出撃させている。この時点のνガンダムは、象徴でもある「フィン・ファンネル」も装備していなかった(あとから換装)。
ちなみに、このときアムロが省略したのは、サイコミュの受信テストである。劇中で、アムロの意思とは関係なくフィン・ファンネルが作動して反撃を行い、怒ったギュネイ・ガスが人質のケーラ・スゥを殺害するシーンがあった。アムロは「ファンネルが敏感すぎた」と後悔していたが、もしかすると満足なサイコミュの受信テストを行えなかった影響もあったのかもしれない。