■実際の稼働期間はたった「1週間」?

 次に注目したいポイントは、νガンダムの稼働期間である。『逆襲のシャア』冒頭の小惑星「フィフス・ルナ」の落下作戦が宇宙世紀0093年3月4日、そして終盤のアクシズ落としが3月12日の出来事だ。

 この間にアムロは、リ・ガズィからνガンダムに乗り換えているため、実際に稼働した期間はせいぜい1週間程度ということになる。

 冒頭のアナハイムのファクトリーにあったνガンダムは、まだ骨組が丸見えだったことを考えると、よくその状態で実戦に間に合わせたものだと驚かされる。

 そんな未完成に近い状態の機体だったにもかかわらず、アムロはネオ・ジオン軍の「ヤクト・ドーガ」や「α・アジール」といった強敵を次々退けていく。最終的にライバルのシャア・アズナブルが乗る「サザビー」と一騎打ちになったが、こちらも互角以上の戦いを繰り広げた。

 シャアは劇中冒頭からサザビーに乗って戦っていたため、機体に対する習熟度と完成度は格段の差があったはずである。

■νガンダムの武装にまつわる細かい設定描写

 νガンダムが装備している武装には、特別な設定が多かったのをご存知だろうか。

 たとえば装備している2本のビームサーベルはそれぞれ規格が異なっている。最速で抜刀可能な右肩後ろのバックパックに装備したメインのサーベルは、増幅装置を備えていた。これにより強力なビーム刃が形成可能で、サザビーの大型ビームサーベルのパワーを上回る描写があったのも、このためと思われる。

 そして、もう1本のサーベルは左前腕のホルダーに装備されているが、こちらは完全に予備で、連邦軍の標準規格品となっている。

 続いてνガンダムのプラモデルの説明書の記述によると、νガンダムのビームライフルは、内蔵された「バーストセレクター」機構によって射撃モードの切り替えが可能とされていた。

 その最大出力で射撃すると、戦艦の主砲と見間違うような威力を発揮する。劇中ではνガンダムのビームライフルによる遠距離からの射撃を見たレズン・シュナイダーが、敵艦から狙撃されたと勘違いするシーンもあった。

 さらにニュー・ハイパー・バズーカも、アムロならではの特殊な運用を想定した機能を有する。背中にマウントしたまま発射したり、ワイヤーで遠隔操作を行ったりするシーンも劇中では確認できた。

 またバズーカ固有の機能ではないが、バズを置き去りにして囮のように使ったのも、アムロらしい芸当である。

 こうして、あらためてアムロの愛機「νガンダム」をチェックしてみると、いろんな面で奇跡的な機体であることを再確認できる。もちろん、パイロットとしてのアムロのすごさが演出した面もあるが、そんな彼の伝説を締めくくるのにふさわしい機体といえるのではないだろうか。

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