岡田あーみんさんといえば、80年代から90年代にかけての少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)で活躍した伝説的な漫画家だ。今でこそ少女漫画ジャンルでもハチャメチャなギャグ漫画は多くあるが、岡田さんの描いたエキセントリックな作品は当時の少女漫画界で異彩を放っていたものである。
岡田さんが描いたギャグ漫画は『お父さんは心配症』『こいつら100%伝説』『ルナティック雑技団』の3作品。いずれの作品も多くの登場人物がいるのだが、なかにはそのキャラが登場したことでより過激なギャグが展開されていったケースもある。今回はそんなストーリーの流れを変えた、斬新すぎるサブキャラたちを振り返ってみよう。
■恋愛ストーリーに発展させた重要人物『お父さんは心配症』安井千恵子
岡田さんが少女雑誌『りぼん』で最初に連載した作品が、1983年から連載が始まった『お父さんは心配症』である。
本作は妻に先立たれた主人公・佐々木光太郎が一人娘の典子を大切に育てるあまり、ボーイフレンドの北野を執拗に攻撃するという中年男の暴走を描いたギャグ漫画だ。
本作に登場する人物は、典子を除いてまともな人物が誰一人いない……。このまま光太郎の暴走だけを中心に描かれていくのかと思いきや、光太郎のお見合い相手の“安井さん”こと安井千恵子が登場してから少し流れが変わる。
第21話「お父さん、再婚への道〈お見合い編〉の巻」で、光太郎のお見合い相手として登場した安井さんは、息子・守を育てる美しいシングルマザーだ。
登場当初は実は守が忍者の末裔で、忍者から急に攻撃を受けるというドタバタシーンがあったものの、安井さん自体は比較的まともなキャラであった。ただ、それが登場回数を重ねるごとにド天然キャラになっていき、物語をさらにかき回していくこととなる。
またそれまで本作は光太郎が娘のボーイフレンドを攻撃する話が中心だったが、安井さんが登場して以来、光太郎と安井さんの恋愛模様も描かれているのが印象深い。なかには、なかなか想いを伝えられない光太郎が奮闘し、最終的にちょっと感動するエピソードなども登場するのだ。
『お父さんは心配症』の最終回では、光太郎と安井さんの結婚式が描かれ、物語は無事に(?)終了する。荒唐無稽なギャグ漫画が長期に渡って連載できたのは、安井さんの登場により恋愛ストーリーの要素が組み込まれたこともあったかもしれない?
■主役が3人から4人になった!?『こいつら100%伝説』ターミネーター
岡田さんが手がけた2作品目のギャグ漫画は、1989年から連載された忍者の弟子3人の活躍を描いた『こいつら100%伝説』である。
本作は忍者道場の老師匠のもとで技を磨く忍者の極丸・危脳丸・満丸の3人が、美しい姫・白鳥姫子を守りながらも彼女を奪い合うハチャメチャコメディだ。
本作は途中まで弟子忍者の3人が主役となり、師匠と喧嘩したり、姫子を取り合ったりとやりたい放題に展開してきた。
しかし第10話にて、未来からやってきた無法者退治専門のサイボーグ・“ターミネーター”が登場して以降、主役は実質3人から4人になった。
ターミネーターのビジュアルは、さいとう・たかをさんが描いた『ゴルゴ13』のデューク・東郷のようだ。未来から3人の元にやってきたターミネーターは、姫子に一目惚れをして未来に連れ去ってしまう。
それを追いかけてきた3人に対し、ターミネーターは指からミサイルを発射。“未来人は指が飛び道具になるのか”と驚愕する危脳丸。極丸は、“あいつと同じ指の奴を連れてきたぞ”といって、なんと小指のない極道さんを連れてくる。それに対し「そのギャグあぶな〜〜い」と、全力キックでツッコミをする編集長……。このように、ターミネーターの登場エピソードは、最初からあーみんワールド全開であった。
その後、3人の弟子たちと同じように、忍者として学ぶことを決めたターミネーター。彼が加わったことで、物語はさらに過激に展開していく。危ないギャグがどんどん加わりつつ、ストーリー終盤はターミネーターの活躍によりちょっとハートフルな展開になるのにも注目だ。