■自由で素直な親友のような存在! 『崖の上のポニョ』リサ

 ジブリ作品のママ像として一線を画する存在が、『崖の上のポニョ』のリサだろう。

 5歳の息子・宗介と、船乗りで家を空けがちな夫・耕一と3人暮らしをしているリサ。彼女からは、ジブリ作品のほかのママキャラのような包容力や、たくましさ、勇ましさはあまり感じられない。

 リサはなかなか家に帰らない耕一に対し、子どものように不満をぶちまけたり、幼い宗介を家に残して職場に行ってしまったりと、ステレオタイプ的な“母親”のイメージには当てはまらない行動をとっている。そのため、なかにはリサの“自由すぎる”行動に苦言を呈す人も少なくないようだ。

 しかし、リサの魅力はなんといっても息子・宗介とのかかわり方だと筆者は思う。リサが自由に動き回ることができるのは、宗介を心の底から信頼しているからではないだろうか。

 子育てにおいて、子どもを丸ごと信頼することは簡単なようで意外と難しい。ついつい口を出したくなってしまうものだからだ。

 リサのように宗介を一人の人間として信頼し、全力で任せることができる母親は、ある意味理想的な姿なのかもしれない。嵐のなか「今、この家は嵐の中の灯台なの」と、宗介に語りかけるリサ。「みんなこの光に励まされている」と、幼い息子を奮い立たせるシーンは印象的だった。

 さまざまな意見はあれど、常に元気でパワフル、底抜けに明るいリサの姿に励まされる人は多い。家族にとって太陽のようなリサは、ジブリ屈指の魅力的なママではないだろうか。

 

 ジブリ作品に登場するママたちを紹介してきた。もちろんそれぞれ個性はあるものの、どのママも魅力的で観る者を惹きつけてきた。

 彼女たちの立ち振る舞いや言葉にはハッとさせられることも多い。作品をそっと支えるママキャラたちにも注目して、今一度名作を振り返ってみてはいかがだろうか。

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