■“西の高校生探偵”が見せる不器用な優しさ…『名探偵コナン』服部平次

 1994年から『週刊少年サンデー』(小学館)で連載が始まった、青山剛昌さんの代表作『名探偵コナン』。

 この大人気ミステリー漫画のなかで、思いがけない変装姿を披露したのが、主人公・工藤新一のライバルとして登場する“西の高校生探偵”こと服部平次だ。

 平次は浅黒い肌と関西弁が特徴的なキャラクターだが、作中、彼は顔にファンデーションを塗り、髪型を整えてライバルである新一に変装した。

 背丈が似ているため案外うまくいくのか……?と思いきや、自前の関西弁を隠しきることができず、あっさりと変装を見破られてしまう。

 そもそも彼が新一に扮した理由は、ヒロインである毛利蘭に自身の正体がバレたと焦っていた“江戸川コナン”こと本物の新一を助けるためだった。

 結果的には偽物だとバレてしまったが、新一のためにわざわざ東京まで駆け付け蘭をごまかそうと奮闘する姿に、彼の不器用な優しさを感じざるをえない。まさに、数々の難事件にともに立ち向かってきたライバル且つ親友だからこその活躍だったといえるだろう。

■“地獄の傀儡師”らしからぬ姿はある意味レア? 『金田一少年の事件簿』高遠遙一

 作中で変装し活躍したのは、なにも味方サイドのキャラクターばかりではない。1992年から『週刊少年マガジン』(講談社)で連載された名作ミステリー漫画『金田一少年の事件簿』(原作・天樹征丸さん、金成陽三郎さん、漫画・さとうふみやさん)のなかでは、主人公・金田一一の宿敵が思いもよらぬ変装を披露している。

 それが、本シリーズを通して金田一とたびたび対峙することとなる、“地獄の傀儡師”こと高遠遙一だ。

 高遠は、世界的なマジシャンだった母親譲りのマジックの技術をいくつも習得しており、そのせいもあってか変装に関しても非常に卓越した手腕を披露している。そんな高遠があまりにも意外な姿で登場したのが、「露西亜人形殺人事件」での一幕だ。

 “スカーレット・ローゼス”の偽名を使い、奇術師として身分を偽りながら金田一らの前に姿を現した高遠。しかし、その姿は顔の上部のみを仮面で隠しただけという、これまでの変装に比べればなんとも雑なスタイルで、その怪しい姿から金田一にも一瞬で正体を見破られている。

 あくまで現場に金田一がいることを想定していなかったゆえの事態だったとはいえ、変装の名人である彼の意外な一面を見ることができるエピソードだった。

 

 漫画のキャラクターたちは実に巧みな手法で変装し周囲を欺くが、ときには作中の登場人物はもちろん、読者にも一瞬で見破られてしまうような“意外”なクオリティの姿を披露することもある。

 ときにシュールに、そしてときにシリアスに……変装する背景も作品ごとに実にさまざまだ。

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