■テンテンとベビーキョンシーにほっこり! とにかく笑えるエンタメ系『幽幻道士』

 『霊幻道士』をもとにして作られ、1986年に公開されたのが『幽幻道士』だ。本作といえば、キョンシーはもちろん、やはりヒロインのテンテンを思い出す人が多いだろう。テンテンは幼い女の子でありながら法術も使える、かなりのしっかり者だ。顔立ちも可愛くまさに美少女で、当時の小学生男子はみんな惚れていた。

 本作では、4人組の孤児を引き連れた大道芸人の親方一行が、キョンシー隊を引き連れた道士と遭遇する。ここで4人組のいたずらからキョンシーが動いてしまい、それを止めようとした親方はキョンシーに影を踏まれてしまうのだ。キョンシーに影を踏まれた者には不吉なことが起こってしまうと言われ、お札を貰う親方。

 その後、親方一行はテンテンが住む街に移動するのだが、ここからが不幸の始まりだった。警察署長に誤認逮捕され、さらに、キョンシーに襲われた署長を助けたことで親方は死亡。悲しみに暮れる4人組は、テンテンの祖父である道士・金に引き取られることとなる。

 しかしどうしても親方に会いたい4人組の気持ちを汲み取り、テンテンが親方を呼び寄せる術をかけるも失敗。これによって親方はキョンシー化してしまうのだ……。

 この作品で怖いシーンといえば、キョンシー化した親方がこれまでに自分を陥れた人々に復讐するところだろう。とくに深夜に署長を追いかけるシーン。ゴミ箱に隠れた署長が息を止めて親方をやり過ごし、ホッとマッチに火を点けたところで後ろに薄暗い親方の顔が登場する……あれには本当に冷や汗をかいた。

 この『幽幻道士』では、吹き替えを務めた面々も素晴らしかった。冒頭の道士を演じたのは緒方賢一さんで、テンションの高さにクスっとさせられる。さらに署長には内海賢二さん。早口で泣きながら親方の棺に謝罪しまくる姿は、どう見ても則巻千兵衛(『Dr.スランプ アラレちゃん』)で、とにかく配役がピッタリだったように思う。

 そして、忘れてはならないのがベビーキョンシーの可愛さだ。骸骨でボウリングをするキョンシーの邪魔をしたり、お札をしているキョンシーに言うことを聞かせたりとなにかと邪魔をしてくるが、ときに助けてくれたりもする。

 スイカ頭をはじめとした4人組の姿も愉快で笑わせてくれるし、ホラーというよりもエンタメ色の強い作品だった。そして本作を皮切りに『幽幻道士』はシリーズ化し、ゲームや舞台にもなり人気を誇っていくこととなった。

 

 キョンシー作品の金字塔とも言える『霊幻道士』だが、本作にテンテンが登場していたと勘違いしてしまっていたほど、あの当時はテンテン人気が席巻していた。

 ちなみにテンテンは可愛いが、かなりの毒舌だ。屋敷にいるキョンシーたちをまとめているが、「生きてるときにロクなことをしてないから 死んでも引き取る人がいないの」「食事代も払えない居候なのに」など、問答無用の言いっぷり。キョンシーたちも頭を下げてうなだれているのも面白かったな。

 キョンシー作品の登場からすでに40年近くが経つが、思い出は色褪せないものだ。あらためて見返してみたい。

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