すっかり涼しくなってきた。秋の夜長にホラー映画でも見てみたくなる今日この頃だ。筆者が幼少期だった1980年代といえば、『霊幻道士』や『幽幻道士』により「キョンシー」が大ブームとなっていた。おそらく多くの子どもたちにとって、初めての“ゾンビ”だったに違いない。
そこで今回は、懐かしのキョンシー映画の見どころや、子ども心にトラウマとなったシーンを抜粋して紹介していこう。
■コミカルな動きだが結構怖かった「キョンシー」
「キョンシー」というと、死者が手を突き出した状態でピョンピョン飛び跳ねている……そんなイメージを持っている人は多いだろう。彼らは生きている人間を襲うのだが、凄まじいパワーを持っていて、なおかつ銃撃も効かない。
冒頭でも紹介したキョンシー映画『霊幻道士』や『幽幻道士』でも、キョンシーたちのちょっとコミカルな動きが面白かったものである。小学校では手を伸ばしてジャンプしながら動く「キョンシーダンス」が流行ったものだ。
キョンシーたちは視力がほぼ失われているのだが、その代わり嗅覚が優れている。人の呼吸で居場所を知られてしまうため、キョンシーが近くに来たら息を止めなければならないのだ。これも学校で流行っていた。
そんな数々のブームを巻き起こしたキョンシーだが、基本はゾンビなので怖い存在だ。道士たちに吹き飛ばされてもすぐに起き上がり、再度襲い掛かってくる姿は不気味で怖く、トラウマになったもの。
ちなみにキョンシーたちは額に術者の血を付けるか、お札を貼ることで動きが止まる。接近戦に優れたカンフー使いでないと、道士は務まらないということだろう。
■キョンシー映画といえば『霊幻道士』! グロテスクなシーンも吹き飛ぶ師匠のカッコ良さ
1985年に公開された『霊幻道士』は、大ブームとなった。主人公・ガウ道士(吹き替え版はチェン道士)のアクションシーンがカッコ良く、2人の弟子であるセン(吹き替え版はチュウサム)とモンの騒動に巻き込まれながら、幽霊やキョンシーと対峙していく。
センはかなりのカンフーの使い手で役立つのだが、モンはどうしようもないヘタレキャラで、さらに途中でキョンシー化もしてしまう。なにかとコミカルなキャラだった。
トラウマもののシーンもいくつかあったが、印象的だったのが女幽霊が人間のフリをしてセンを誘惑し自宅に招くシーンだ。危険を察知して後を付けたガウが女の正体を見抜くのだが、このとき、顔の右半分が溶け、目玉が飛び出しているというグロテスクなシーンが登場する。これにはビビった……。だが、ここからがもっと凄い。
その後、助けに入ったガウは女幽霊と戦うことになるのだが、ハリネズミのように髪をとがらせ、自ら首を切り離して攻撃してくる女幽霊。さらに首のない本体も動き出すので、ある意味キョンシーよりタチが悪く気持ち悪かった。
そして、最後に登場する最強のキョンシーも、また手強い。コイツはヒロインであるティンの祖父で、ガウやセンの攻撃をものともしない怪力の持ち主。目は見えるようで、ガウの弟弟子の道士が管理するキョンシーたちを立ち向かわせるなど、総動員でも倒せないのだ。最終的にはなんとか動きを封じて火をつけ、火葬するというラストで締めくくられた。
全体を通して怖いシーンやグロテストな描写も多いのだが、厳格で真面目な師匠とお笑い担当のモンのバランスが秀逸で、見応えのある内容だ。怖いシーンにエンタメを取り入れてくるのが香港映画らしく、今見返しても面白い。