■最終局面で主人公を裏切った?
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場するヒロインの「ニナ・パープルトン」も、物語が進むにつれて理解しがたい行動をとったキャラクターだ。
物語序盤では、敵陣営に奪われたガンダム試作2号機(GP02)と、友軍のガンダム試作1号機(GP01)が戦う姿を見て、「私のガンダムが!」と、パイロットそっちのけで機体の心配をするような少々非常識な面もあった。
だがそれは、ガンダムの開発に関わったエンジニアであり、愛着と思い入れの強さを示したシーンなので致し方ないところもある。
その後、主人公のコウ・ウラキと親密な間柄になり、れっきとしたヒロインとして互いにサポートする良い関係に見えた。
しかし、ニナは敵陣営のライバルであるアナベル・ガトーの元恋人だったことが発覚。そして最終局面で、彼女はまさかの行動に出る。
地球に落下中のコロニー内に潜入したコウは、ガトーと対峙する。そこに割りこんできたニナは、あろうことか元彼のガトーをかばい、現在の恋人であるコウに銃口を向けたのである。
すでにコロニーの落下は免れない状況だったこともあり、コウに無抵抗なガトーを撃たせたくなかったという解釈もできるが、主人公に感情移入して観ていた視聴者としては、到底納得できない裏切り行為に見えたのも当然だ。
その後、傷ついたガトーの腕を支えながら、ドアの向こうに姿を消したニナ。それを黙って見送るしかなかったコウが、言葉にならない叫び声をあげていたのが痛々しかった。
そして物語のラストシーンでは、自身にかけられた罪状が消え、北米のオークリー基地にたどり着いたコウが、ゲルググに乗る親友のチャック・キースと再会を果たす。
そのときニナが、コウの前に現れる。彼女は一瞬バツの悪そうな表情を浮かべてから、ニッコリとほほ笑んで見せた。
コウにとってのハッピーエンドを示唆するシーンかもしれないが、ガトーと一緒にコウの前から去っていったときの光景を思い出すと人間不信になりそうな気もする。
■主人公の感情を利用して大量殺戮?
ガンダム作品に登場する「悪女」といえば、宇宙世紀の作品に限った話ではない。『機動戦士ガンダムSEED』に登場した「フレイ・アルスター」の行動を振り返ってみよう。
主人公のキラ・ヤマトは、カレッジのマドンナ的存在のフレイに対し、憧れのような感情を抱いていた。そんな彼女はキラの友人であるサイ・アーガイルの婚約者でもある。
遺伝子操作により強靭な肉体と優秀な頭脳を持って生まれたコーディネーターたちを憎んでいたフレイは、精神的に不安定だったキラを慰めて、男女関係を結ぶ。そこにはキラを懐柔してザフト軍と戦わせ、コーディネーターを根絶やしにしたいという思惑があった。
サイとの婚約を破棄し、キラの不安定な状況を知りながら、自分の目的遂行のために利用した彼女の行動は、まさに悪女そのものといえる。
かつて「ガンダム作品の悪女」といえばクェス・パラヤの名前が挙がることも多かったが、アナザーガンダム作品にも強烈な悪女キャラがたくさんいる。今後もガンダム作品が増え続けるとともに、視聴者の心をエグるような悪女たちの名が更新されていくのだろう。
ガンダム好きの皆さんにとって、一番の悪女キャラとして思い出すのは誰だろうか。