血を分けた近しい存在である「親子」。かけがえのないものである反面、それゆえに喧嘩が絶えず不仲になってしまう場合もあるだろう。
漫画の世界でも敵味方の親子が対決する展開がしばしば見られるが、さらに実写化ともなれば、演じる俳優たちの熱のこもった演技により、より印象的なシーンとなることもある。
そこで今回は、漫画実写化作品で敵味方の“親子”を演じた俳優たちと、彼らの迫真の演技によって生まれた名シーンの数々を紹介したい。
■原作とは異なる結末を迎えた『デスノート』鹿賀丈史vs藤原竜也
原作・大場つぐみさんと作画・小畑健さんの『デスノート』は、2006年に前編と後編からなる実写映画が公開され大ヒットを飛ばした。
本作では、死神のノートである「デスノート」を使って理想の世界を作ろうとする“キラ”こと夜神月を藤原竜也さんが、そのキラを追い詰める警察捜査本部長で、月の父である夜神総一郎を鹿賀丈史さんが演じており、迫力の親子対決が見られた。
本作では原作漫画とは異なる結末が用意されていた。Lを倒し(本当は死んでいなかったのだが)、勝利を確信する月。彼の前にアメリカに向かったはずの総一郎が現れる。総一郎は息子を信じつつも、自らの名をデスノートに書いてまで覚悟を見せたLに協力し、ほかの刑事とともに事の顛末を見届けていたのだった。
しかし、月は正体がバレて追い詰められる。最後は死神・リュークにも見限られ、デスノートに自身の名前を書かれてしまう。駆け寄る父・総一郎に残した「キラは正義なんだ 父さん分かってくれよ」という月の最期の言葉が非常に印象的だった。
終始、父を欺き続ける月に対し、最後まで息子を信じ続ける父・総一郎。目が離せない展開が続き、観る者を魅了した。さすが2人とも舞台などで名を馳せる名役者だ。
ちなみに、藤原さんと鹿賀さんは2008年、チェーホフの戯曲『かもめ』で舞台初共演を果たしており、こちらの舞台では親子ではなく、一人の女性を巡り壮絶なバトルを繰り広げている。
■実の親子によって再現『美味しんぼ』三國連太郎vs佐藤浩市
原作・雁屋哲さん、作画・花咲アキラさんによるグルメ漫画の金字塔『美味しんぼ』。
1996年に公開された実写映画は、実の親子である佐藤浩市さんと三國連太郎さんの初共演作品となった。
原作漫画では料理を通して主人公・山岡士郎と父・海原雄山の親子対決が描かれているが、佐藤さんと三國さんの実際の親子関係にも通づるものがあり、当時、本映画での2人の共演は話題を呼んだ。
名シーンとなったのは、“究極”と“至高”の料理対決2回戦だ。食べる者の心まで動かし勝利した雄山。それでも自分の料理は負けていないと言い寄る士郎に「なにも分かっていないんだよお前は!」と、一喝する。このシーンでは、演じている佐藤さんと三國さん親子の本当の喧嘩を見ているかのような迫力があった。
その後、士郎の亡き母で雄山の妻・はつえの得意料理であった丹波の煮豆を機に、互いを理解しようとし始める二人。作中最後の勝負では、雄山が所有する窯でそれぞれ料理を盛る器を作って勝負することとなるのだが、窯仕事をする雄山の姿をじっと見つめる士郎の目が印象的なラストシーンとなっていた。
ちなみに2008年には、三國さんの代表作である『釣りバカ日誌19』に出演を果たしている佐藤さん。想像にすぎないが、『美味しんぼ』という作品が、二人の関係になんらかの変化をもたらすきっかけになったのかもしれない。