■ヒリヒリするような殺陣シーン『どろろ』中井貴一vs妻夫木聡

 手塚治虫さんの人気漫画『どろろ』。2007年公開の実写映画では、妻夫木聡さん演じる百鬼丸と中井貴一さん演じる醍醐景光の親子対決があった。

 中井さん演じる父・醍醐景光は、天下を獲るという己の野望のために、もうすぐ生まれる我が子の身体の48カ所を魔物に差し出した大悪党だ。一方、妻夫木さん演じる息子・百鬼丸は魔物に身体を奪われた姿で生まれ落ち、すぐに川に捨てられる。義体を与えられなんとか生き延びた百鬼丸は、自分の身体を取り戻す壮絶な旅に出るのだった。

 舞台挨拶で妻夫木さんは「『壬生義士伝』の中井さんの殺陣が好きだった」と打ち明け、「(中井さんとは)一度一緒にアクションをやってみたいと以前から思っていました」と語っていた。対する中井さんも、妻夫木さんとの殺陣シーンは「非常に楽しかった」と語っている。

 クライマックスは、魔物に魂を売ってまで天下を獲ろうとする父・景光と、そんな父に怒り狂う百鬼丸のヒリヒリするようなラストバトルが展開された。

 会話こそ少ない親子役であったものの、殺陣シーンを通じて2人の名役者の想いがぶつかり語り合うような名シーンとなっていた。

 

 今回は、漫画実写化作品で敵味方の「親子」を演じた俳優たちの名シーンを紹介してきた。

 『デスノート』では、藤原さんと鹿賀さんの迫真の演技が物語の緊張感を高め、親子の葛藤を見事に表現していた。また『美味しんぼ』では、実際の親子である佐藤さんと三國さんが本物の親子喧嘩さながらの演技を見せ、さらに『どろろ』では、妻夫木さんと中井さんが、親子の因縁をぶつけ合う壮絶な戦いを繰り広げた。

 そのどれもが観る者の心を強く揺さぶる名シーンであり、作品をより魅力的に彩ったといえるだろう。

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