■理解者のはずがすべての元凶だった!『ビルド』石動惣一
『仮面ライダー』作品におけるおやっさんキャラは、ヒーローとして孤独に戦うライダーを見守る理解者の側面が強い。しかし、長い仮面ライダーの歴史のなかでは、そのお約束を盛大に裏切ったキャラがいる。それが、2017~2018年に放送された『仮面ライダービルド』の石動惣一である。
石動と『ビルド』の主人公・桐生戦兎の出会いはとある雨の日だ。記憶喪失の戦兎を保護した石動は、彼の記憶の鍵は悪の組織・ファウストが握っていると推測する。奴らを追えば記憶の手がかりが掴めると考え、隠し持っていたビルドドライバーを戦兎に託した。
以上が戦兎が変身する仮面ライダービルドの始まりだ。普段は戦兎と友達のように接するおちゃらけた男性だが、他人を想う心を持つ理想のおやっさんである。
……と、戦兎も視聴者も思っていた。そんな石動の正体は、ファウストの幹部・ブラッドスターク、そして惑星を滅ぼすために生きる地球外生命体エボルトだった。なんと『ビルド』における黒幕でありラスボスだったのだ。
戦兎の記憶を奪ったのも、戦兎を仮面ライダービルドとして戦わせたのも、すべては彼の計画だ。ただ地球を滅ぼすのに都合が良かったから戦兎を利用したのである。
おやっさんと思われていた男がすべての元凶でラスボスだった衝撃は、ライダーファンの間で今も語り草だ。
初代『仮面ライダー』から始まり、「平成仮面ライダー」でも絶えず続いてきた「おやっさん枠」の伝統は、元号が令和に変わってからも続いている。
そのなかには今回紹介してきたような個性の強いキャラも少なくない。長く愛されてきた『仮面ライダー』シリーズだからこそ、既存のイメージから外れたインパクトある“おやっさん”も生まれるのだ。