1977年から連載がスタートした、松本零士さんの壮大なSF漫画『銀河鉄道999』。少年・星野鉄郎と、謎の美女・メーテルが、999号に乗り、さまざまな星で冒険をする姿は、読者を魅了した。
しかし、本作には全体的に物悲しいストーリーが多く、鉄郎と出会った星の住人が命を落としてしまうようなシーンも多い。ハッピーエンドになりそう……と思えたエピソードでさえ、とんでもない結末を迎えるケースもあるのだ。今回は、そんな“ヤバすぎるオチ”が待っているエピソードを振り返っていきたい。
■美しいものが醜い…「ヤミヤミの姉妹」
まずは、「美しさ」とは何かを考えさせられる物語から紹介したい。
鉄郎とメーテルは、すべてが闇に包まれた惑星「ヤミヤミ」に降り立つ。そこで鉄郎は少女・ミルとその父親から、この星を明るい世界にしようと光を与えるため人工太陽を打ち上げようとしている姉・レランの殺害を依頼される。しかし、鉄郎はレランに捕まってしまい、結果的に彼女はメーテルの能力を使って、人工太陽の打ち上げに成功するのだ。
人工太陽のおかげで、ヤミヤミの星はすっかり明るくなった。しかし、尋ねてきた妹のミルの顔を見て、「けがらわしいっ! 近よらないで! 化け物っ!!」と叫ぶレラン。
それを聞いたミルは「その化け物を見えるようにしてしまったのは、だれなのさ!!」と激昂し、レランを銃で殺してしまう。その後、ミルはレラン殺害の約束を守らなかった鉄郎に対しても怒って銃を向けるが、鉄郎の顔を凝視すると銃を下ろし、そのまま外に出て自殺してしまうのであった。
ミルが自殺した理由は、自分の醜い姿に絶望したからだった。「ヤミヤミ」の朝刊によると、全人口の99.9%が自分の醜さに耐えかねて自殺してしまったという。
“二人とも大美人だったのに”と言う鉄郎に対し、メーテルは“美しさの基準は場所によって、いろんなものの見方や感じ方がある。ミルが鉄郎を撃てなかったのは、鉄郎の顔が美しかったからかもしれない”と、説明するのであった。
人工太陽の打ち上げが成功し、真っ暗闇だった星が明るくなり、幸せが訪れることになるのかと思ったこのエピソード。しかし最後は自身の顔の造形を知った人々がその醜さに衝撃を受け自殺をしてしまうという、なんとも残酷な結末を迎えている。
ルッキズムが旧時代的だとされている今、いったい美しさとは誰が決めて何が基準になっているのか、考えさせられるエピソードだ。
■ワイン好きにはたまらないが…!?「コスモワイン」
次に紹介するのは、1日中ワインが降る星「コスモワイン」だ。
ここでは“ワインは水と同じ扱い”と聞き、鉄郎はホテルのレストランでワインを飲み続け、酔っ払って路上で寝てしまう。しかし、この星ではワインの雨が降っているあいだの外出は禁止されており、機械警察に捕まり処刑されそうになる。だが、反アルコール秘密結社「ウオーター」の助けもあり、鉄郎はなんとか命を救われる。
この星では、生身の人間を脅迫して機械の体にすることが横行していた。雨の日に外出が禁止されていたのは、政府が生身の人間が酒を飲んで気を大きくして反乱を起こすことを恐れていたからだ。しかしメーテルの介入もあり、そうした行為を容認していた首相は処刑された。
これにより法律が改正され、コスモワインでは生身の人間も自然のワインを楽しめるようになった。しかし、ワイン飲み放題となった星に「これから楽園になるのか 地獄になるのかわからないけれど……」と、つぶやくメーテルであった。
「コスモワイン」はお酒好きには魅力的な星だが恐ろしさも伴う。ワインの雨が降るあいだは空気中にもワインの霧が立ち込めており、実際、鉄郎は急性アルコール中毒の危険にさらされた。メーテルは外でゴーグルと防毒マスクを着用しており、この星の危険な環境をとても理解していたように見える。
やはりワインに限らず、お酒は適度に楽しむのが良いのだろう。雨や水までアルコールに満ちた世界では、決して幸せにはなれないのだ。