尾田栄一郎氏による人気漫画『ONE PIECE(ワンピース)』にて、主人公のルフィにとっての憧れであり、海賊の世界でも伝説的な存在“四皇”の一角に君臨し続けている「シャンクス」。
ルフィやほかの海賊との関わりのなかで、その影響力や器の大きさ、圧倒的な強さといった部分は少しずつ明らかになっているものの、いまだに謎の多い人物でもある。
そのせいか、シャンクスには「実は複数人いるのでは?」「実はラスボスなのでは?」など、いろいろな“説”が飛び交っている。そこで読者の間でささやかれているシャンクス絡みの「うわさ話」を、あらためて振り返ってみよう。
■1話で腕を食われたのは「ルフィに過酷さを教えるため」説
『ワンピース』の記念すべき第1話が連載されたのは、1997年のこと。あれからすでに27年以上が経過した。シャンクスは、その第1話から登場。そして“近海の主”からルフィを守るために、片腕……それも利き腕である左腕を失ってしまうという衝撃のシーンが描かれた。
当時、すでに10億ベリー超えの懸賞金がかけられ、海賊の世界でその名を轟かせていたシャンクス。現在は四皇にまでのぼりつめた彼が、“最弱の海”と形容される「東の海(イーストブルー)」の近海の主程度に利き腕を食われたことには、違和感を覚える読者も多いことだろう。
このシーンについて「実はすでに左腕を失っていた」「近海の主以外が左腕を奪った」など、さまざまな考察が行われるなかで、一読者目線でしっくりくるのは「ルフィを守りつつ、海賊の過酷さを教えるためにあえて左腕を食わせた」という説だ。
そもそも近海の主の場面の前から、実力的にはるか格下である山賊ヒグマに、みすみすルフィをさらわれるという失態を犯している。「覇気」の存在が明らかになった今、シャンクスほどの実力者であれば、たやすく阻止できそうな状況だったにもかかわらず、だ。
もしかすると、1話の時点でそこまで深い設定はなかったのかもしれない。しかし、尾田先生ならば、こうした展開にもちゃんと意味を持たせている、と考えることもできるはずだ。
いかにシャンクスといえど、ヒグマがルフィをさらったり、近海の主が現れたりするのを予知できるとは思えない。だから、その状況を利用して「ゴムゴムの実」を食べてしまったルフィの行く末を考え、海賊の過酷さを身をもって教えたのではないか、という理由だ。
そして、この時点でシャンクスが「ゴムゴムの実」の真の価値を知っていたとすれば、のちに白ひげと対面した際に、失った左腕について言った「……“新しい時代”に懸けて来た…」という言葉にも重みが増す。少なくとも左腕は“食われた”のではなく、明確な理由があって意図的に“食わせた”ということなのだろう。
そしてこのシーンについて、もうひとつメタ的な視点から触れると、第1話のネームを見た当時の担当編集者が、心を揺さぶるような「ヤマ場」となる演出が足りないと指摘したという。これを受けて尾田先生は、翌週にシャンクスの腕がなくなるシーンを追加したことが明かされている。