■現実味を帯びてきた? 「シャンクスは二人いる」説

 謎の多いシャンクスにまつわる描写のなかでも、とくに衝撃的だったのが、第907話でシャンクスと思しき人物が聖地マリージョアで、世界政府の最高権力たる五老星と面会した場面だ。このときシャンクスらしき男は「ーーある海賊について話が…」と切り出していた。

 この数話前には、シャンクスが懸賞金が15億ベリーに跳ね上がったルフィの手配書を見ながら「もうすぐ会えそうだな…ルフィ」とつぶやくシーンがあったばかりだった。 

 だが、五老星と面会していたときのシャンクスの横顔には、左目の傷が見当たらなく、「あれは本当にシャンクスなのか」と疑問を抱く読者もいた。こことは別の場面で同様の角度で描かれたシャンクスの横顔には傷が確認できたので、もしかすると単純に作画ミスという可能性もあるが……。

 さらに、もうひとつシャンクスに関する謎めいたシーンがある。マリンフォード頂上戦争に現れ、「この戦争を終わらせに来た」と告げたシーンは有名だが、シャンクスはその前日に新世界でカイドウと小競り合いを起こしていたことが判明している。

 新世界からマリンフォードまで、たった1日で航海できるとは思えない。そこで浮上したのが、「シャンクスが二人いる」という説だ。当時ならば「シャンクスが二人いるなど飛躍しすぎでは?」と思っただろうが、物語が進んだ今となっては、わりと現実味のある説になりつつあるのだ。

 というのも、映画『ONE PIECE FILM RED』にてウタがシャンクスの娘と目されており、当の五老星から「あの娘がフィガーランド家の血筋でもか」と発言した。そののち、1086話に登場したのが、天竜人の「フィガーランド・ガーリング聖」なる人物だ。

 さらにゴッドバレーを舞台にした1096話では、若かりし頃のガーリング聖が登場。容姿はどことなく今のシャンクスに似ており、五老星の発言を踏まえると、彼がシャンクスの血縁……それも父親だったとしても不思議はない。

 そして、そのガーリング聖は、作中で「見ていろ子供達…」と発言していた。もしシャンクスがガーリング聖の子だとすれば、ほかに兄弟がいる可能性もある。そのキャラは存在どころか名前すら出ていないので、「シャンクスが二人いる」という説に何か関係していると考えられないだろうか。

■最後に憧れの存在を越える?「実はラスボス」説

 物語が最終章に突入し、最後にルフィらの前に立ちはだかる「ラスボス」は誰なのかという議論も白熱している。そのなかで、「ラスボス最有力候補」「真の黒幕」などと言われているのが、ほかならぬシャンクスである。

 同じ海賊王を目指しながらルフィと対照的に描かれることの多い“黒ひげ”ティーチ、世界のトップに君臨するイム様などと並んで、シャンクスがラスボス候補に挙がるのはなぜだろうか。

 彼が候補に挙がるのは、作中で見せてきた謎の多い言動と、影響力の大きさが関係ありそうだ。まず2年前のマリンフォード頂上戦争では、あれだけの大戦争を実際に終わらせ、その2年後には世界政府の最高権力・五老星にも接触している(先述した理由で、本人かは不明だが…)。

 さらにワノ国編のラスト付近の行動も気になる。同じ四皇だったカイドウ、ビッグ・マムの陥落を比較的近い場所で見物。ルフィたちに介入しようとした海軍の緑牛を覇王色の覇気で威嚇し、撃退している。

 そうかと思えば、ローと共闘してビッグ・マムを撃破したユースタス・キッドを、たった一人かつ一撃で倒し、「ロードポーネグリフ」の写しを奪った。

 先にキッドがしかけたとはいえ、結果的に四皇には手を出すことなくロードポーネグリフの写しを手に入れており、結果だけ見ると、したたかで腹黒いといえなくもない。

 もし、本当にシャンクスがラスボスとなるのなら、ルフィにとって憧れの存在を自分の手で倒すという少年漫画の王道的な展開になりそうだが、実際どうなるのだろうか。

 物語の途中までは、世界のバランサーのような役割を担っていたシャンクスは、四皇の顔触れが変わったタイミングで、「そろそろ奪りに行こうか」「“ひとつなぎの大秘宝”(ワンピース)」と宣言した。

 ルフィまで含めた四皇たち全員がワンピースを目指すと言った以上、シャンクスとルフィが激突する可能性は否定できない。そしてその頃には、多くの読者が気にしていた「シャンクスにまつわるうわさ」についても、明らかになっていることだろう。

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