■ライバル宮田の対策にも!? まさかのサウスポーをマスター

 2024年9月現在、『はじめの一歩』は間柴了の世界戦の真っただ中だ。一歩の同期としてしのぎを削ったライバルが世界に挑戦するほど成長したわけだが、この世界戦をきっかけに一歩は思いもよらない武器を手に入れた。それが、左利きの構えで戦うサウスポースタイルだ。

 間柴が挑む現チャンピオン・ロザリオが自分によく似たインファイターだと知った一歩は、力になりたい一心で間柴のスパーリングパートナーになろうとする。しかしロザリオは左利きで、一歩は右利きだ。しかし、そこで引き下がらないのが幕之内一歩という男である。

 現役時代さながらの猛特訓でサウスポーの戦い方を身につけ、間柴とのスパーリングに臨む一歩。間柴の代名詞“フリッカー”をかいくぐって左の大砲で攻めるその姿は、右利きのボクサーとは思えないほど堂に入っていた。

 一歩のサウスポー習得は、本来のオーソドックス(右利き)とスイッチする両利きボクサーの誕生につながる。それは永遠のライバル・宮田一郎と死闘をくり広げたランディー・ボーイJr.にとても近いものだ。

 サウスポーとオーソドックスを切り替えるスタイルはカウンターの天敵といわれており、宮田もランディーにKO寸前まで追い詰められた。もし念願のライバル対決が実現すれば、その威力が存分に見られることだろう。

 

 ここまで、引退後に一歩がどんな成長を遂げたかを見てきた。

 ざっくりまとめると「オーソドックスとサウスポーの使い分け」「世界王者に通用するカウンターを駆使」「すでに世界トップクラスだった頃からさらに磨きのかかった破壊力を持つハードパンチャー」といったところだろう。もちろん引退直前に完成しかけた“新型デンプシー・ロール”も忘れてはいけない。

 こんなの絶対に強いし、絶対見たいに決まってる。実際、作中でも「今の一歩がリングに上がったらどうなる?」と語られている。惜しむらしくは一歩本人に復帰の意思がまったくないところだが、それでも願わずにはいられない。

 一歩よ、ふたたびリングに上がってくれ、と。

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