まもなく連載35周年を迎える森川ジョージ氏の『はじめの一歩』(講談社)といえば、幕之内一歩のボクサー人生を追いかけるボクシング漫画のレジェンドだ。しかし現在の一歩はボクサーを引退して鴨川ジムのセコンドとして日々を送っており、一歩の引退がショックで読まなくなった人も少なくないかもしれない。
だが、そんな一方で「一歩が現役復帰するのではないか?」と期待させる伏線が、作中にかなり増えてきている。それどころか、引退してから一歩が強くなっている描写も多く、いち読者としてその日が楽しみで仕方ない。
そこで今回は『はじめの一歩』作中の描写をもとに、もし一歩が現役復帰したらどんなボクサーになるかを筆者の期待と願望たっぷりで考えてみたい。
■現役時代のダメージも回復! 引退がパワーアップに繋がっている
そもそも一歩が引退した理由は、パンチドランカー疑惑があったからだ。長年蓄積してきたダメージに脳を蝕まれ、これ以上続ければボクシングどころか日常生活すらままならないからと、一歩自身が決断している。
しかし、いざ引退してセコンド生活を始めてからはパンチドランカーの症状はなりを潜め、それどころか現役時代を超える動きを見せるように……。引退後もトレーニングを続ける勤勉さや、ハードな試合から離れて長年の疲労が抜けたおかげだろう。
123巻で鴨川源二会長を相手に久々のミット打ちをおこなったときは、ミットを弾きとばすほどのパンチを連発。鴨川会長や鷹村守をして「強くなっている」と確信させるほどの、パワーとスピードを見せた。
引退前ですら世界屈指のハードパンチャーだったが、今はそれをも上回る豪腕を手に入れているのは間違いない。
■苦手だったカウンターを習得! セコンド生活を経て技術が向上
セコンドとなった一歩はリングの外からボクシングを観たり、新人の相手をしたりするなかで、ボクサーとしても成長している。左ジャブの大切さ、後手に回らず先手を打ち続ける積極性など、当時は気づけなかった欠点を学んでいるのだ。
特筆すべきはカウンターの習得だ。一歩は新人ボクサーのミット打ちを務めるなかでパンチを掴むように受け止める術を覚えた。これは相手のパンチを利用するカウンターに通ずる技術であり、現役時代の一歩はまともに使えなかったものだ。セコンドとして学んだ知識や経験をもとに、ボクサーとしての苦手要素を克服しているのが今の一歩なのである。
その成果は、かつてのライバル、アレクサンドル・ヴォルグ・ザンギエフとの対決で遺憾なく発揮された。136巻で世界防衛線を控えたヴォルグとスパーリングをおこなった一歩は、かつて苦しめられた“ホワイトファング”をグローブ越しに掴み、さらにカウンターを叩きこむ奮闘を見せた。
ヴォルグは今やは押しも押されぬJ・ライト級世界王者だ。彼に通用するカウンターは、すなわち世界に通用する武器に他ならないのではないだろうか。