■世界と共に壊れていくその姿にトラウマ確定? 『ドラゴンヘッド』山田孝之

 1994年から『週刊ヤングマガジン』(講談社)にて連載された望月峯太郎さんの『ドラゴンヘッド』は、未曽有の大災害により崩壊した世界で生存者となった学生たちが極限状態で体験する“恐怖”の数々を描いた作品だ。

 追い詰められていく少年たちの姿や、彼らに襲い掛かる暴力を通じ、“人間の本質とはなにか”というテーマに鋭く切り込んだ実に個性的な一作で、2003年には妻夫木聡さんを主演とした実写映画が公開されている。

 そんな本作において、その“怪演”で視聴者の度肝を抜いたのが、のちに映画『世界の中心で、愛をさけぶ』でブレイクすることとなる山田孝之さんだ。

 現在でもドラマや映画はもちろん、数々の実写化作品にも登場している人気俳優の山田さんだが、本作では主人公・テルの同級生である高橋ノブオを演じている。

 ノブオは大災害を偶然生き残りテルたちと共に行動していたのだが、極限状態にさらされ続けたせいで精神に異常をきたし、最終的には全身にけばけばしい“化粧”を施し、テルたちをも襲うキャラクターだ。

 原作でも強烈だったこのノブオの“化粧姿”を、山田さんはボディペイントを使って完全再現。真っ白な肌に紅色の斑点を描き、目や唇の周りを赤で塗りつぶしたその姿はもはや“怪物”のようであった。

 無論、見た目だけではなく、山田さんの卓越した演技も素晴らしい。徐々に精神が壊れていき、ボディペイント姿で襲い掛かってくる彼の姿は恐ろしく、観客にも凄まじいインパクトとトラウマを与えた。災害の恐怖のみならず、人間そのものの恐ろしさを存分に表現した演技だった。

 

 漫画原作の映画では、今をときめく人気イケメン俳優たちの若き姿を数多く目にすることができる。現在とはかけ離れたイメージのキャラクターを演じるその姿に、彼らがブレイク前から秘めていた確かな実力の一端を感じ取ってしまう。

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