上杉達也も原田正平も「リアルなら絶対モテるわ…」あだち充『タッチ』の男子キャラ「察する能力」が高すぎる件の画像
少年サンデーコミックス『タッチ』完全復刻版第1巻(小学館)

タッチ』、『H2』、『ラフ』などなど、これまで名作漫画を多数手がけてきた漫画家・あだち充氏。高校スポーツをテーマにする一方で、恋愛漫画としても楽しめるのがあだち作品の特徴だ。

 男女の微妙な距離感が描かれる中で、キャラクターたちは、言葉で表現されなくとも、相手の気持ちにいち早く気づいたり、心の機微を鋭く察したりする。それはあだち氏の代表作『タッチ』でもそうで、いくつもの名場面が描かれてきた。

 今回は、『タッチ』に登場した、現実ではなかなかお目にかかれないかもしれない、「察しのいい男たち」に焦点を当て、エピソードを振り返っていきたい。

■南の熱に気がついたのは……

 まずは上杉和也が亡くなる前のエピソード「心が通じる二人」から。物語序盤のテーマでもある兄・達也、弟・和也、そして幼なじみである浅倉南の三角関係が描かれたエピソードだ。

 いつもと変わらない様子で授業を受ける南だが、このときの彼女は実は39.5度の熱があった。しかし、和也はそれに気づかない。達也だけがそのことに気づき、南を家に送り届け、二人の距離が近づく。

 達也がいかに南のことをよく見ているか、彼女の無茶しがちな性格を理解しているかが、よく分かるエピソードだ。対する和也は、南の不調に気がつかなかったことを恥じてか、なんとも切なそうな顔をする。

 和也も決して鈍い男ではない。南と達也が気まずくなった(ベストカップル賞のノートのエピソード)時も、少ない情報から察して仲直りのアシストをしている。和也も察する能力の高い男なのだ。

 普段は南を気にかけている和也だが、なぜこのときは焦りを感じていたのだろう。南と達也の関係に複雑な思いを抱き、また甲子園予選を目前に控えたプレッシャーもあった。

 南が発熱する前夜に、和也はトランプ占いをしている南を後ろから抱きしめている。南がその行動に戸惑うと、和也はすぐに離れる。そして、和也の突然の行動に動揺し、南はベランダで物思いにふける。もしかすると、これが彼女の発熱の一因だったのかもしれない。

 南に対する想いから焦ってしまった和也、戸惑う南、変化に気づく達也。達也の魅力が伝わるエピソードだが、和也のことを考えると、なんとも切ない三人の変化だ。

■終始察しのいい男だった原田正平

 達也たちの同級生である原田正平も察しのいい男の一人だ。

 原田は強面の巨漢、ボクシング部で腕っぷしもいい。その見た目からか、不良たちからよく絡まれる。そんなプロフィールとは裏腹に、非常に気が利く人間でもある。達也と南だけに限らず、新田兄妹や『MIX』でともに再登場した西村とも知り合いで交友関係も広い。

 原田は、主要キャラクターの良き理解者として描かれる場面が多い。和也と比較され、劣っていると言われていた達也の才能を早くから見抜いていた数少ない人物の一人でもある。野球部に入らなかった達也を、ボクシング部に勧誘している。

 恋愛に関しても、達也、和也、南の三角関係を正確に理解していた。南の達也に対する想いを察し、和也と南を舞台に立つ王子様とお姫様に見立て、達也にも舞台に立つよう説得した。

 実は原田も南に好意を抱いているのだが、南の幸せを願って自身は一歩引いた立場から達也たちを気にかけている。本当にいい男なのだ。

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