■ジオン軍パイロットが思わず漏らした泣き言
最後に紹介したいのは、テレビアニメではなく、劇場版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』にあったシーンから。連邦の総司令部があるジャブローへの降下作戦が行われ、ガウ攻撃空母から多数のモビルスーツが飛び降りていく。
そしてあまりにも激しい対空砲火を見た、ひとりのパイロットが「お、降りられるのかよ!」と悲鳴をあげた。
ザクやグフだけでなく、ドムですらたやすく撃墜されるという、すさまじい対空砲火により、約半数のジオン機が降下中に撃墜された。それだけに、今まさに死地へと飛びこもうという状況で、思わず怖気づくパイロットがいたのもリアルである。
また、このシーンのときに主題歌の『哀 戦士』が流れていたこともあって、名もなきパイロットの何気ないセリフがより際立った印象がある。
『機動戦士ガンダム』では、有名なキャラクターによる名言だけでなく、名もなき一般兵がさりげなくつぶやいたセリフも強烈なインパクトを残した。これは、ふつうのアニメではあまり見られないことであり、昭和に製作された『ガンダム』という作品が、いまだに愛され続けている理由のひとつなのかもしれない。