名作『機動戦士ガンダム』では、さまざまなキャラクターたちが名言を残している。
主人公アムロ・レイの「親父にもぶたれたことないのに」や、シャア・アズナブルの「坊やだからさ」などのセリフは、作品を知らない人でも聞き覚えがあるのではないだろうか。
そして、なかには無名のキャラクターのセリフながら、視聴者に強烈なインパクトを与えたものもある。そんな名もなきキャラたちが残した、印象深い名言を振り返っていこう。
■シャアに熱弁をふるった「ジオン軍のエンジニア」の名言
まずはガンダムを多少なりとも知っている人であれば、一度は聞いたことがあるであろうセリフから紹介したい。
それはテレビアニメの第42話「宇宙要塞ア・バオア・クー」に描かれた、新機体「ジオング」を巡るシャアとジオンのエンジニアのやりとりのなかで飛び出した言葉だ。
ジオングの現段階の性能が80%と言われたことに憤慨するエンジニアは、シャアに対して「冗談じゃありません! 現状でジオングの性能は100%出せます!」と力説。続けてシャアは「足はついていない」と未完成であることを指摘。
するとエンジニアは「あんなの飾りです!」「偉い人にはそれがわからんのですよ」と反論した。
このセリフの汎用性は高く、ガンダム好きなら「◯◯なんて飾りです」「偉い人にはそれがわからんのですよ」と、日常生活で使ったことのある人も多いはず。
このやりとりの面白いところは、階級がはるか上のシャアに対して、一介のエンジニアがズケズケとモノを言ったところにある。シャアもそれを不快に思っていない様子で、職人気質のエンジニアに対する信頼がうかがえるシーンでもあった。
ちなみに放送当時は名もなきエンジニアだったが、のちに「リオ・マリーニ」という名前がつけられている。
■戦場に駆り出された学徒兵の悲痛な叫び
続いても第42話で描かれた、ア・バオア・クー攻防戦のなかで飛び出したセリフだ。
アムロが、シャアのジオングとの戦いを覚悟したとき、突然ふたりの間に割って入るように1機のザクIIが現れる。そこにジオングが放ったメガ粒子砲が飛来し、ザクの胴体に直撃した。
このザクに乗っていたのは若い学徒兵で、コクピット内でパニックに陥った青年は「あっああああ…ひ、火が! か…母さん!」の悲鳴を残し、機体は爆散した……。
ほんの短い描写だったが、戦争の生々しさが伝わってくる言葉であり、この場面が忘れられない人も多いのではないだろうか。
同戦場には新型のゲルググ、リック・ドムなどが投入されたものの、すでにジオンに残されたベテランは少なく、学徒動員のパイロットが多数参戦していた。
そのうえでアムロとシャアの最終決戦のなかに、こういった描写を差し込んでくるところが富野由悠季監督らしい。そして戦争の悲惨さを視聴者に印象づけた、強烈な言葉といえるだろう。